グロッタ(英語表記)grotta

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「グロッタ」の意味・わかりやすい解説

グロッタ
grotta

ヨーロッパの庭園に造られる人工の洞窟。その起源は古代ギリシア,ローマにさかのぼるが,当時は神々の聖所としての意味をもち,冥界への入口とも考えられた。 15世紀にイタリア・ルネサンスの庭園に再び登場するが,これは古代庭園に存在したと考えられたからであり,夏季の格好の涼み場として噴水を伴って造られた。 L.アルベルティは古代人がグロッタを自然の洞窟に似せて造り,軽石を張ったと記し,16世紀なかばのイタリア式庭園の確立期のグロッタには例外なくこの記述の影響がみられる。その一方でグロッタには当時の文学や音楽の牧歌的な志向も関連しており,フィレンツェパラッツォ・ピッティの大グロッタのようにアルカディアの風景をフレスコ画レリーフで示すものもあった。この流行は 16世紀中にヨーロッパ各地に広まったが,次第に水仕掛けによる遊戯的な性格が強まった。フィレンツェ郊外のメディチ家のプラトリーノのビラのように水力で人形が動き,グロッタの中に声や音を発する装置が仕込まれたものも現れた。 17世紀のフランス庭園,18世紀の風景式庭園でも好んで造られ,スタウアヘッドの庭園はその代表例。また,中国庭園をまねて,岩による築山の上に東洋風の亭を配し,築山内部にグロッタを造った庭園も多くみられた。

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