カナダのピアニスト。トロント音楽院でピアノを学び,12歳で同音楽院を卒業し,14歳のときにトロント交響楽団とベートーベンのピアノ協奏曲第4番を共演してデビューした。以後カナダの各地でリサイタルを開くかたわら,R.シュトラウスなどの後期ロマン派,シェーンベルクをはじめとする第2次ウィーン楽派の音楽を学んだ。1955年にワシントンで演奏会を開き,続いてニューヨークで開いたバッハの《ゴールドベルク変奏曲》の演奏会は,センセーショナルな成功をおさめ,以後ヨーロッパやソ連で華やかな演奏会活動を続けた。しかし不完全な部分の多いコンサート活動に疑問を感じ,64年,公開演奏会を中止し,以後レコーディング活動に専念,テープ編集による完ぺきな再現作業を目ざした。ペーザントG.Payzant(1926- )は,こうしたグールドの態度に注目し,《グレン・グールド--なぜコンサートを開かないか》という著書を執筆している。グールドの演奏様式は,明確なフレージングとアーティキュレーションによるもので,レコード音楽の時代の典型的なスタイルの一つとされている。
執筆者:船山 隆
アメリカの天文学者で,地球の経度の決定に業績があった。ハーバード大学を卒業してから,ゲッティンゲンでC.F.ガウスに数学と天文学を学んだ後,アメリカ政府の沿岸測量局の経度部長(1852-67)として,電気通信によって経度を決定する方法を開発し,ヨーロッパとアメリカの経度差を求めるために用いた。1849年には天文学雑誌《Astronomical Journal》を発刊,また,アルゼンチン共和国の依頼でコルドバ天文台を作り(1862),そこで,7万3160星の赤緯帯星表を作り(1884),3万2448星の子午線観測から一般目録を編纂(へんさん)した。彼は南天と北天の観測から,天球を一周して分布する4等より明るい輝星が,天の川に沿ったものと,それに対して約20°傾斜した帯とに分かれていることを見いだした。後者はグールド帯と呼ばれている。
執筆者:石田 蕙一
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カナダが生んだ最初の世界的なピアノ奏者。1964年以後は演奏会をいっさい拒否、もっぱら録音に専念した異色の演奏家である。トロント生まれ。トロント音楽院在学中の46年、トロント交響楽団と共演してカナダでデビュー、55年アメリカにデビューしてセンセーションをおこし、57年にはヨーロッパにデビューし国際的な名声を確立した。バッハの個性的な解釈は世界の楽界に強烈な衝撃を与えたが、衝撃が収まったあとでは、グールドの新解釈が音楽的な意味をもっていることが広く認められた。ルネサンス期から現代まで、さまざまなスタイルの鍵盤(けんばん)音楽作品をレパートリーにしていたが、バッハ演奏家としての仕事がもっとも傑出していた。
[岩井宏之]
アメリカの鉄道資本家。投機的な株式操作で悪名が高い。貧農の子として生まれる。無学だったが、鉄道株の取引から、1867年、東部の幹線鉄道であるエリー鉄道の取締役となった。バンダービルト(父)との争いのなかで不法な新株発行その他を行い、一般から非難され、同鉄道社長の座を追われた。しかし、巨富を手にした彼は、74年、大陸横断鉄道ユニオン・パシフィックの重役となり、次々と関連路線を買収し、「グールド系列」をつくりあげた。だがバンダービルト(子)らとの運賃値下げ合戦、84年の恐慌などで痛手を受け、力を失った。値下げは結果的に一般の利益となったが、その鉄道は整備やサービスが悪かった。
[長沼秀世]
…同一の演奏を何回も再現できるレコードやテープは,コンサートでは聴きとれないような演奏の細部を拡大するため,演奏家は,1音符のミスもない正確な演奏をめざすようになった。そして20世紀後半に入ると,G.グールドのように,レコード録音でしか完璧な演奏はできないとし,コンサート活動をいっさい行わない演奏家も登場するようになった。また演奏の〈歴史主義〉は,1960年代から〈古楽〉と結びつき,中世やルネサンス時代の古い音楽を,当時の楽器やピッチ(音の高さ)や演奏習慣でそのまま再現することが広く行われるようになった。…
…テープやレコードの高度な録音技術の発達は,演奏のスタイルも変質させ,演奏家たちの主要な関心は,音楽作品の全体よりもむしろ細部に向けられるようになり,精緻で正確なスタイルが好まれるようになった。ピアニストのG.グールドは,コンサートでは不正確な演奏しか可能でないと明言し,コンサートの形式を拒否して,何度も録音を取り直しながら完璧な演奏を目ざしてレコーディングに専念した。大衆社会の登場とともに出現したレコードは,〈今,ここで〉という音楽行為の一回性を否定し,W.ベンヤミン流に言えば〈アウラaura〉の消滅した新しい複製芸術のあり方を示している。…
※「グールド」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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