ケロイド(読み)けろいど(英語表記)keloid

翻訳|keloid

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケロイド」の意味・わかりやすい解説

ケロイド
けろいど
keloid

蟹足腫(かいそくしゅ)ともいい、皮膚に受けた傷があとになって盛り上がってくる状態をさし、組織学的には結合織が異常に増殖した状態がみられるが、真の原因はまだつかめていない。熱傷(やけど)、切り傷、毛包炎、BCG注射後にしばしばみられ、受傷後1~2か月を経てから瘢痕(はんこん)が隆起し始め、円形楕円(だえん)形、線状形、蟹足(カニの足)形、キノコ状形など種々の形態を呈する。顔面、上腕伸側、肩甲骨部、胸骨部などに好発し、増大時にしばしば瘙痒(そうよう)を伴う。人種的差異がみられ、白人に少なく黒人に多く、黄色人種でもかなり高頻度にみられる。

 ケロイドには次の2型がある。

(1)瘢痕ケロイド 傷または創を受けた範囲に限って瘢痕が隆起する状態で、外傷を受けた範囲より大きくはならないのが特徴である。大部分のものは年数がたつ(数年から10年)と扁平(へんぺい)化し、潮紅、痛み、かゆみなどは3年以内に消失することが多い。

(2)真性ケロイド ケロイド体質と関係があり、前記の好発部位に生じ、その隆起は皮膚の弾力線維の走行に従って伸び続け、餅(もち)を引き伸ばしたようになり、中心部は退色扁平化する傾向がある。

 治療は、発症後3か月以内ならスポンジによる持続圧迫が有効である。3か月以上のものでは圧迫療法とステロイド剤の局所注射やダーモジェット器による圧入、ステロイドクリームの擦り込みを併用する。ケロイドが大きく隆起が高度の場合には、同部を切除後、0.3ミリメートル程度の薄めの分層植皮を行う。放射線早期のものにのみ有効で、1年以上経たものでは無効である。真性ケロイドにも同様の治療を行うが、容易に反応しない。

[池田重雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケロイド」の意味・わかりやすい解説

ケロイド
keloid

境界鮮明,扁平あるいはやや半球状に隆起し,表面平滑で紅褐色を呈する結合組織増殖をいう。多くは外傷や手術創,やけどなどによる瘢痕部に続発する。痛みやかゆみを自覚することがある。真性ケロイドの好発部位は前胸部,肩,背,関節周囲などで,周囲にカニ足状に拡大する。熱傷,手術創などに続発する瘢痕性ケロイドは限局性で,周囲に拡大することはない。組織学的には結合線維細胞増殖による線維腫である。

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