日本大百科全書(ニッポニカ) 「コウカアブ」の意味・わかりやすい解説
コウカアブ
こうかあぶ / 後架虻
[学] Ptecticus tenebrifer
昆虫綱双翅(そうし)目短角亜目ミズアブ科に属する昆虫。大形種で、体長11~23ミリメートル。体は黒色で、はねは全体が黒褐色、腹部の基部が白色、前脚(ぜんきゃく)と中脚の脛節(けいせつ)基部と跗節(ふせつ)は黄白色。触角第2節の内側は先端が前方に突出している。成虫は便所、畜舎、ごみため周辺に5~9月ごろ普通にみられる。腹部の基部が細く、姿や飛び方もハチに似ていて、後架すなわち便所の周りを飛ぶのでベンジョバチ(便所蜂)の呼び名があるが、ヒトを刺すことはない。産卵性で、幼虫は便所、畜舎の堆肥(たいひ)、ごみためで発生し、形態は扁平(へんぺい)で動きは鈍い。囲蛹(いよう)を形成する。日本全土に分布し、中国、朝鮮半島、台湾にも産する。近年、この種に似て触角が長く、腹部第2節に1対の白か黄色の紋があるアメリカミズアブが侵入、同じような場所に発生するのでコウカアブが駆逐され、姿が少なくなってきている。コウカアブの近縁種キイロコウカアブP. auriferは、山地の便所や畜舎付近に多い。体長16~22ミリメートル。体は黄褐色で、腹部に白と黒の帯があり、はねは全体に黄褐色。6~10月に出現する。日本全土、シベリア、中国、東南アジアに広く分布する。
[倉橋 弘]