改訂新版 世界大百科事典 「アメリカミズアブ」の意味・わかりやすい解説
アメリカミズアブ
Helmetia illucens
双翅目ミズアブ科の昆虫。第2次世界大戦後,1950年ごろから米軍の荷物とともに日本に移入され,増えはじめたのでこのように呼ばれる。体長15~18mm。細長く,腹部に白色または褐色の斑紋がある。触角は長くなく,リボン状で,第3節は扁平で大きい。幼虫はコウカアブの幼虫に類似し,背腹は扁平で体に多くのとげをもち,尾端は角ばらない。日本では関東以南の本州各地から南西諸島,小笠原諸島に分布する。東南アジア,オセアニアの熱帯地域に広く分布することから,日本にはこれらの地域からももち込まれたと推定される。幼虫は有機質を食し,とくに鶏舎,豚舎などで糞から発生する。また台所のごみからも発生し,ごみ処理場にも多数見られる。成虫は関東地方では6~7月から10月ごろまで発生するが,南西諸島などでは発生期間はより長い。家屋内に侵入し,ぬかみそのおけに発生した例もある。
執筆者:篠永 哲
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報