コウシンソウ(読み)こうしんそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コウシンソウ」の意味・わかりやすい解説

コウシンソウ
こうしんそう / 庚申草
[学] Pinguicula ramosa Miyoshi

タヌキモ科(APG分類:タヌキモ科)の多年生の食虫植物。葉は楕円(だえん)形または卵形で短柄があり、表面は短腺毛(せんもう)を密生し、腺毛から出る粘液で小虫を消化する。花茎は高さ3~8センチメートル、密に腺毛があり、単純または下方で分枝する。6~7月、茎の先に淡紫色の距(きょ)のある唇形花を横向きに開く。花期後に花茎は長く伸びて直立し、蒴果(さくか)を結んで岩に触れて種子を散らす。山地帯から亜高山帯日陰岩壁に生え、関東地方北部に固有の種である。生育地はきわめて限られ、栃木県日光(にっこう)市の自生地は国の特別天然記念物に指定されている。名は、発見地の庚申山(こうしんざん)(日光市南西部)にちなんだもの。

[高橋秀男 2021年10月20日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コウシンソウ」の意味・わかりやすい解説

コウシンソウ(庚申草)
コウシンソウ
Pinguicula ramosa; butterwort

タヌキモ科の多年草。関東地方北部の高山の岩壁に生える。葉の表面の多数の腺毛から分泌する粘液で虫を捕える食虫植物。ムシトリスミレ P. vulgarisに似ているが,これよりやや小型で花茎が分岐する点で異なる。葉は数枚が根生し,長さ3~5cmの狭卵形で先は丸い。6~7月に,長さ5~8cmの花茎を伸ばし,下部で2本に分れて先端に各1個の淡紫色の花を横向きにつける。花は一見スミレに似た左右対称形で長い距がある。初め栃木県の足尾近くの庚申山で発見されたのでこの名がある。

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