改訂新版 世界大百科事典 「コクヌスト」の意味・わかりやすい解説
コクヌスト
Tenebroides mauritanicus
甲虫目コクヌスト科の昆虫で,貯蔵穀類に多く見られる。世界各地に分布し,英名はcadelle,穀物を食害するところから穀盗人と名付けられたが,成虫は主として穀物中の甲虫やガを捕食し,幼虫は穀物を食するが,昆虫の幼虫も好んで食べる。製粉工場や飼料工場などの倉庫に多い。成虫は体長6~10mm,黒褐色から赤褐色で触角は先の5節が太い。成虫は穀物に通常は1卵ずつ産みつける。幼虫は白色で,頭部,各胸節の斑紋,腹部末端節の後方部と1対の尾突起は暗褐色。胸脚を有し,各腹節の背面は弱くこぶ状に隆起する。早く産卵されたものは年内に成虫となるが,遅れたものは幼虫で越冬する。成虫,幼虫の越冬場所は倉庫内では壁板や床下の裂け目,または木材中に食い入る。蛹化(ようか)もこのような場所で行う。コクヌスト科Trogositidaeは成虫,幼虫とも主として食虫性。英名はbark-gnawing beetle,grain-gnawing beetle。オオコクヌストTemnochila japonicaの幼虫は枯れたマツの樹皮下でキクイムシ類などを捕食する。
執筆者:林 長閑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報