日本大百科全書(ニッポニカ) 「コクヌスト」の意味・わかりやすい解説
コクヌスト
こくぬすと / 穀盗人
[学] Tenebroides mauritanicus
昆虫綱甲虫目コクヌスト科に属する昆虫。世界に広く分布し、貯蔵穀類や穀類の食品にみいだされる甲虫である。体長6~10ミリメートル。体は細長い楕円(だえん)形で平たく、黒褐色ないし褐色、触角や脚(あし)などは赤みがある。頭はほぼ半円形、前胸は四角で後方がすこし狭まり、上ばねは長形で後方が丸まる。幼虫は白いが、頭と前胸・中後胸の各1対の紋や、1対の突起をもつ尾端は黒褐色。体は後方へ向かってすこし太くなる。穀類や穀粉など食品も食べるが、ほかの害虫を捕食することも知られており、益虫の面もある。成虫は1年、ときには2年ぐらい生き、雌はその間に1000ぐらい卵を産むという。越冬するとき周囲の木材や製粉用の絹布を食害することもある。
コクヌスト科Trogossitidaeは、世界に500種以上が知られ、熱帯地域に多く、日本には20種近くが産する。体長2~20ミリメートルぐらい。長形から卵形の種が含まれ、多少とも平たい種が多い。オオコクヌストTemnochila japonicaなどは樹皮下にみられ、幼虫も捕食性、キノコにいるものや穀類につくものもいる。近年、セダカコクヌスト属Thymalusなど卵形の種がマルコクヌスト科Peltidaeとして分離されることが多い。
[中根猛彦]