改訂新版 世界大百科事典 「コノハエビ」の意味・わかりやすい解説
コノハエビ (木の葉蝦)
Nebalia bipes
コノハエビ目コノハエビ科の小型甲殻類。潮間帯の潮だまりや浅海の砂泥底にすみ,体長1cm内外の一見小エビに似た体をしているが,胸部と腹部の前部は左右から閉殻筋をそなえた二枚貝様の大きな背甲で包まれている。背甲の先端に関節があり,可動なへら状の額角をもつ。この額角の下に有柄で可動な赤色の複眼がある。体は全体黄白色を帯びる。有機残骸などを食べ,ろ過摂食性ともいわれているが,はえなわなどにかかった魚を食害するなど,肉食性,腐肉食性でもある。汚水にも,温度の変化にも強い。卵は雌の胸肢内肢の剛毛で包まれ保持される胸部下面の育房内で卵,ノープリウス期を過ごし,ほとんど成体に近い形になってから育房を去る。大西洋,地中海,グリーンランド,チリ,ニュージーランドおよび日本などにわたる広い分布を示す。ほかに日本からパラネバリア・ロンギペスParanebalia longipesが相模湾から知られている。
コノハエビ目(薄甲目)は8胸節と咀嚼(そしやく)胃をもつことのほか,生殖孔の位置などで,明らかに高等な甲殻類の属する軟甲亜綱の一員であることを表している一方,この類に近いと思われる化石が古生代カンブリア紀から知られていることや,橈脚(じようきやく)類など下等甲殻類に見られるような尾叉(びさ)を腹部にもつことなどは,軟甲亜綱中もっとも原始的であることを示している。現在7属約30種が海岸線付近より水深4500m以上の深海まで知られている。
執筆者:蒲生 重男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報