改訂新版 世界大百科事典 「コモチシダ」の意味・わかりやすい解説
コモチシダ (子持ち羊歯)
Woodwardia orientalis Sw.
葉が断崖壁や斜面から垂れ下がる大型のシシガシラ科のシダで,葉の表面にたくさんの芽を生ずるためにコモチシダと呼ばれる。根茎は太く,短く匍匐(ほふく)し,葉を叢生(そうせい)する。葉はよく発達すると2mにも達し,三角状長楕円形で,革質である。葉柄は長く,基部に披針形,光沢のある褐色の大型鱗片を密につける。葉身は2回羽状に深裂,羽片は羽状に深裂し,裂片は線形で先は鋭い。葉脈は網状脈である。胞子囊(ほうしのう)群は細い長楕円形で,胞子囊群がつく網目は深くくぼみ,厚い包膜が内向きにおおい,くぼみのふたになる。宮城県以南,富山県以西の本州,四国,九州に分布する。葉の表面には小さい葉をつけた脱落しやすい芽が多数生じることがあり,日当りのよい所に生えるものでは特に多い。ヨーロッパやアメリカでは観賞用にされているという。コモチシダ属Woodwardiaは世界に10種ほど知られ,そのうち5種が日本に自生する。
執筆者:加藤 雅啓 この属の化石はウッドワルディアといい,おもな化石種としてW.endoana,W.decurrens,W.sasaeなどが北海道の諸炭田から産する。石狩炭田に広く分布する羊歯砂岩層は,このシダ類化石を多産するところから名づけられた。古第三紀の諸炭田に多産することは,当時の北海道が現在よりはるかに暖かい暖帯だったことを意味している。
執筆者:浅間 一男
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