北海道中央部の夕張山地・空知山地にある埋蔵量日本一の炭田。北は空知川流域、南は
昭和三三年(一九五八)当時、石狩炭田には一〇四の炭鉱があり、一一二四万五七六四トンを産出、全道産出量の七四・五パーセントに及んだ。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
北海道のほぼ中央部に位置し,北は空知川流域から南は穂別川流域まで,南北約85km,東西最大約30kmの広大な地域を占める炭田。中生代の白亜系を基盤とし,古第三系,新第三系,第四系からなり,古第三系は石狩層群と幌内層群からなる。石狩層群(始新世~漸新世)は石狩炭田の含炭古第三系の総称で,下位から,登川,幌加別,夕張,若鍋,美唄,赤平,幾春別,平岸,芦別の9層に分けられている。炭田の北半部を空知地区,南半部を夕張地区と呼んでいる。日本最大の炭田であり,埋蔵量約30億tといわれ,炭質は粘結性原料炭が主であるが,一般炭も産出した。
執筆者:大橋 脩作
石炭の発見は安政年間(1854-60)とされるが,開発は,アメリカ人のB.S.ライマンによる地質調査ののち,1879年官営幌内炭鉱の開坑に始まる。82年採炭が始まり,同年幌内~手宮間の鉄道も全通し,北海道における近代的炭鉱業が始まった。幌内は新開地であったため炭鉱労働は囚人に多く依存した。89年北炭(北海道炭礦鉄道,のち北海道炭礦汽船)は幌内炭鉱と鉄道の払下げを受け,鉄道輸送の支配をてこに石狩炭田で支配的地位を築いた。囚人労働は1894年に廃止され,飯場制度が広く採用された。1906年に鉄道が国有化されて以降,三井,三菱が進出し,とくに三井は北炭を支配下に収めた。さらに住友も進出し,20年代には財閥系企業による生産支配が確立した。生産量は1910年149万t,18年389万t,25年517万tで,北海道全体の90%以上をしめた。1920年代には切羽の集約,採炭の機械化が進み,飯場制度も解体され,鉱夫管理は直轄になっていった。戦時期には増産を強いられ,44年に戦前期最高の1302万tを生産した。戦後,経済再建の重点産業のひとつに位置づけられたころには1000万t前後で,51,52年ころからカッペ採炭法が普及し,高度成長期には増産を進め,60年には1472万tで筑豊に代わって全国最高になった。60年代の石炭産業斜陽化のなかでも合理化に努め増産し,66年には史上最高の1748万tを生産したが,その後炭鉱の撤退が続き,79年は16鉱で846万tに減少した。主要炭鉱はいずれも高能率の機械化採炭方式を確立しているが,82年に最新鋭の北炭夕張新鉱が前年のガス突出・坑内火災事故をきっかけに閉山したことは石狩炭田の苦悩を象徴している。
執筆者:荻野 喜弘 炭価の国際競争力喪失にともなう国の石炭政策に従い,1987年に三井砂川,北炭真谷地,89年に北炭幌内,90年に三菱南大夕張,92年に三井芦別,94年に住友赤平と主要炭鉱が次々と閉山。95年の空知炭鉱(北炭系)の閉山で大手の稼行炭鉱はなくなった。
執筆者:酒井 高明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
北海道中央部にある日本最大の炭田。南北80キロメートル、東西25キロメートル、北は空知(そらち)川流域から南は夕張(ゆうばり)川流域に及ぶ夕張山地西部を占め、埋蔵量64億トン。北の空知炭田と南の夕張炭田に分ける場合もある。炭質は粘結性原料炭から、非粘結性の一般炭まで種々あるが、地質構造が複雑で、深部良質炭の採炭はガス爆発の危険性が高いため閉山に追いやられた例も多い。1997年(平成9)には坑内採炭の大炭鉱は姿を消し、露頭炭依存の八つの小炭鉱が芦別(あしべつ)、赤平(あかびら)、歌志内(うたしない)、美唄(びばい)などに残るにすぎない。石狩炭田の開発は、中部の幌内炭山(ほろないたんざん)(現、三笠市)の開坑に始まり、1882年(明治15)に幌内と小樽(おたる)手宮間に鉄道が敷かれ、石炭輸送が始まった。当初は官営事業で空知集治監(監獄)(現、三笠市)の囚人を使い、多くの犠牲者を出した。道庁時代に入ると経営は北海道炭礦鉄道会社(ほっかいどうたんこうてつどうがいしゃ)(北炭)に移り、北の歌志内、南の夕張などに炭鉱が開発され、鉄道建設も進んで南の室蘭(むろらん)とも結ばれた。第一次世界大戦前後から本州大資本も炭鉱開発に乗り出し、北炭、三井、三菱(みつびし)、住友の四大資本が主要炭鉱を経営する点に特徴があり、中小炭鉱も加えて第二次世界大戦後には頂点に達した。多くの炭鉱都市の出現もこの時期である。1960年代以降、日本の石油エネルギーへの転換、海外輸入炭依存により、合理化や閉山が進んで、1997年(平成9)には年間出炭量も露頭炭65万トンにまで減少し、ほぼ全量が電力向けという状況にある。しかし国内エネルギー源の少ない日本では貴重な資源であることは確かである。
[柏村一郎]
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