地質時代の時代区分の一つで、新生代の最初の紀であり、暁新世(ぎょうしんせい)、始新世、漸新世の三つをあわせた時代の総称。およそ6600万年前から2303万年前までの時代をいう。古第三紀に形成された地層を古第三系という。気候は比較的温暖で、堆積(たいせき)物は石灰岩質に富む、ヒマラヤ―アルプスなど世界の大山脈が造山期へと転化した時期にあたる。生物地理区の分化はまだなく、生物は汎(はん)世界的に分布するものが多い。現生の生物と共通する種はきわめて少ない。植物界では、中生代白亜紀に繁栄し始めた被子植物の発展が目だつ。海生の底生大形有孔虫のヌムリテスNummulitesが繁栄した時代で、ヌムライト紀ともいう。
[山口寿之 2015年8月19日]
地質時代の区分の一つ。古第三紀は6500万年前から2500万年前までの約4000万年間の時代で,この後に続く新第三紀と合わせた時代を第三紀という。すなわち一般には第三紀を二分した亜紀として扱われるが,独立の紀であるとする見解もある。古第三紀は新第三紀との動物群の著しい差異をもとに,C.F.ナウマンによって提唱された(1866)。この時代は大型有孔虫のヌンムライト(貨幣石)の化石が多いため,フランスなどでは貨幣石紀と呼ぶ。古第三紀は古いほうから,暁新世,始新世,漸新世に三分され,暁新世と始新世の境界は5500万年前,始新世と漸新世の境界は3800万年前とされる。古第三紀は原始哺乳類の時代で,現在みられる哺乳類の多くのグループの祖先型が出現した。暁新世には霊長類が,始新世の初めには海牛類,長鼻類,偶蹄類,奇蹄類などが出現したが多くは小型であった。大型で古第三紀独特の奇蹄類の雷獣(ブロントテリウムなど)などもいた。植物では被子植物の全盛期に入り,北半球では,カエデ,ブナ,シュロなどが多かった。古第三紀の気候は全体に温和で,とくに始新世には現在の温帯林が北極海沿岸に,亜熱帯林が北ヨーロッパや北海道まで広がっていて,著しい温暖期であった。始新世はまた大海進の時代で,この時代の地層は世界各地,とくにロンドン・パリ盆地,西シベリア平原,アルプス・ヒマラヤ地帯,およびその南の北アフリカ・アラビア半島地域,北米大陸沿岸域,アマゾン盆地などに広く分布する。日本でも,九州中西部,常磐,石狩,釧路などの炭田地帯で,石炭をはさむ陸成層と浅海成層が厚く分布する。また西南日本太平洋岸では,外洋性の厚い始新統と漸新統が広く分布する。始新世中ごろから南極大陸に大陸氷河の形成が始まり,気候は徐々に寒冷化に向かう。漸新世は世界的な海退期で,この時代の地層が欠落している地域が多い。また漸新世後半からそれまでずっと広い海域(テチス海)だったアルプス・ヒマラヤ地帯で造山運動が始まり,これによって現在の地球上の海陸分布の概形がほぼきまった。
→地質時代
執筆者:鎮西 清高
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…第三層はそれらをおおう軟らかい泥岩や砂岩の地層で,この時代が第三紀である。第三紀は,ふつう6500万年前から2500万年前までの古第三紀と,2500万年前から200万年前までの新第三紀の2亜紀に区分される。また,古第三紀は古い方から暁新世,始新世,漸新世に,新第三紀は中新世,鮮新世に細分されている。…
※「古第三紀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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