翻訳|corvette
軍艦の一種で、近海における対潜、商船護衛、侵入阻止、警備、哨戒(しょうかい)などをおもな任務とした、フリゲートより小型で基準排水量600~2000トン程度の水上戦闘艦艇。
元来は、17世紀にフランスが最初に建造し、その後各国で広く建造された、3檣(しょう)(檣は帆柱のこと)平甲板型船体に、砲18~20門装備の甲板1層を有する小型帆装軍艦につけられた艦種名称で、19世紀中ごろの汽帆併走艦時代まで存在していたが、汽走鋼製軍艦時代に入り消滅した。
第二次世界大戦初期にイギリスは、近海での船団護衛用に、捕鯨船をベースとした簡易型小型低速護衛艦フラワー級Flower Class(基準排水量925トン)を建造し、この艦種にコルベットの名称を復活させた。本級およびその改良型はイギリス連邦諸国できわめて多数建造され、当初計画の近海のみならず大西洋全域で船団護衛に使用されたが、船型過小であったため、より大型高能力のフリゲートにとってかわられるようになった。日本、アメリカ、イタリアなども、同様の小型護衛艦をつくり使用した。
第二次世界大戦後、潜水艦の能力向上により、洋上での対潜、護衛用の艦は能力不十分のため姿を消し、主として沿岸警備、小規模な紛争への対処、陸戦協力、漁業保護などを目的とした小型軽兵装艦や、沿岸水域作戦用の小型護衛艦が、中小海軍国用につくられた。しかしその後、小型対艦ミサイル、自艦防御用対空ミサイル、軽量自動化中口径砲などの出現、機関制御および武器管制システムの大幅自動化による省力化の達成、ガスタービンなど小型軽量大出力推進機関の発達、船体構造および動揺軽減装置の進歩による航洋性向上などにより、1960年代末期からコルベットは、安価にしてかつ有力な兵装を有する小型戦闘艦へと発展を遂げ、多数建造されるようになった。これらは洋上における航洋性と、対潜性能をある程度犠牲にしているが、従来の駆逐艦やフリゲートに匹敵する水上攻撃力と自艦防空力を備え、速力はおおむね25~30ノットで、経済上大型艦の建造が許されない国や、地勢上洋上作戦を必要としない国にとり最適の艦種として重用されている。
現在のコルベットには、フリゲートの小型版的な艦と、高速ミサイル艇を大型化した基準排水量500~700トン、高速力(35ノット前後)の艦との2型式がある。前者は現用艦の多くを占め、対水上攻撃重視型、対潜重視型、沿岸哨戒型、これらの複合型などがあるが、対水上攻撃力、対潜能力、自艦防空能力などを相応に強化して小型汎用(はんよう)艦へと発展しつつある。後者はほとんどが対艦ミサイル装備の対水上攻撃重視型である。
[阿部安雄]
『堀元美・江畑謙介著『新・現代の軍艦』(1987・原書房)』▽『『世界の艦船第698号 特集 新世代のコルベット』(2008・海人社)』▽『Stephen SaundersJane's Fighting Ships 2010-2011(2010, Jane's Information Group)』
17世紀から19世紀にかけて使用された帆走の小型軍艦。1930年代末期に小型の汽走鋼製艦の艦種として復活し,現在では排水量1200トン前後の汎用戦闘艦をさす。帆船時代は軍艦を大きさの順に戦列艦,フリゲート,コルベットなどに分類した。コルベットは一層甲板上に2~3本のマストをたて,18~20門の砲を玄側に1列に配置したものであった。以後この名称は廃れていたが,1930年代末期にイギリスで汽走鋼製艦〈フラワー〉級(925トン,速力16ノット)が建造され,コルベットと呼称してフリゲートに次ぐ戦闘艦として一般に使用されるようになった。第2次世界大戦中は対潜水艦主体の船団護衛に活躍したが,潜水艦性能の向上に伴い,外洋での対潜活動に不向きとなって,大海軍国では姿を消しつつあった。50年代に排水量1000トン未満で速力20ノット前後の航洋性あるコルベットが中小海軍国を中心に建造され,平時の沿岸警備や漁業保護,小規模な紛争や動乱の鎮圧に使われた。50年代後半,フリゲートの大型高速化,高性能化に伴って,対潜戦を重視した排水量約1200トン,速力20~30ノットの航洋性あるコルベットが各国に現れ始めた。近年,対艦ミサイルを装備するものがしだいにふえ,火砲類も軽量小型で高性能の中小口径砲が装備されるに至って,水上攻撃力や自艦防御能力をもつ小型汎用艦的性格を保有するようになった。
執筆者:佐倉 俊二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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