フリゲート(読み)ふりげーと(英語表記)frigate

翻訳|frigate

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フリゲート」の意味・わかりやすい解説

フリゲート
ふりげーと
frigate

おおむね駆逐艦より小型で基準排水量1500~5000トン程度、対潜、対空、水上打撃力などの機能を備え、速力30ノット前後の軽快で経済的な汎用(はんよう)水上戦闘艦艇。軍艦の一種。元来は帆船時代の艦種名で、戦列艦の次に位し、排水量1000トン前後、3檣(しょう)(檣は帆柱のこと)横帆、1層の砲甲板をもち、24~34門の大砲を備え、戦列艦に比べ速力と航続力が優れた艦をフリゲートとよび、戦場での偵察・通報、私掠(しりゃく)船の掃討船団護衛、沿岸警備などに用いた。19世紀後半、汽走鋼製艦の時代に入ってフリゲートは巡洋艦へと発展し、19世紀末ごろにはこの名称は使われなくなった。

 第二次世界大戦中の1942年に、イギリスは駆逐艦の不足を補うものとして、洋上でのドイツ潜水艦の攻撃から輸送船団を守るために、コルベットより有力な護衛艦である基準排水量1370トン、速力20.5ノットのリバー級River Classを建造して、これをフリゲートと呼称し、約60年ぶりにこの艦種名が近代軍艦に対して復活した。リバー級およびその改良発達型を含めフリゲートは、第二次世界大戦中にイギリス、カナダ、アメリカで多数建造され、対潜能力主体の艦だけではなく、対空戦闘能力重視のものも出現し、これらは戦争遂行上欠くことのできぬ重要な艦種となった。

 戦後イギリスは、駆逐艦より小型で速力24~32ノット、航洋性に富む護衛艦をフリゲートの艦種名に統一し、おおむね対潜能力の向上重点を置いて逐次建造・整備を図り、ほかの多くの国もこれに倣い、フリゲートは各国海軍兵力の根幹をなす艦種となった。アメリカは、戦時急造艦を整理するとともに、新たに駆逐艦より大型で対潜・対空戦闘能力が高く、指揮・情報機能を強化した艦を建造し、最初これを嚮導(きょうどう)駆逐艦とよんだが、のちにフリゲート(DL)と改称したため、この艦種名称は国により二様の意味をもつことになった。その後アメリカのDLは、対空ミサイル装備などの兵装強化、空母護衛任務艦への原子力推進機関採用などにより、しだいに大型化して巡洋艦なみの規模になったため、1975年に基準排水量5670トン以上の艦を巡洋艦に、それ以下のものを駆逐艦に艦種変更し、従来護衛艦(DE)と呼称していた中速・中型護衛艦と、パトロール・フリゲート(PF)の名称で新規建造中の艦を、新たにフリゲート(FF)に類別し、他国と同一のレベルにそろえた。

 フリゲートは1970年代から、対空・対艦両ミサイル、軽量中口径自動砲、艦と一体化して有機的運用を行う艦載ヘリコプター・システム、高性能情報処理システムなどを採用・装備するようになり、現在では対潜・自艦防空・水上打撃力機能を兼ね備え、艦隊または船団の護衛、対潜掃討、対水上戦、揚陸戦支援、哨戒(しょうかい)、海外警備などにあたる汎用水上戦闘艦艇へと発達を遂げ、対潜ヘリコプターを1~3機搭載するものが多い。

 冷戦終結後は対地打撃力機能も重視されるようになり、これに加えて最近の艦では抗堪(こうたん)性(敵の攻撃に耐えてその機能を維持する能力)向上、対レーダー・ステルス対策、ミサイル発射機の垂直発射システムVLS(vertical launch system)化などの新技術を採用して大型化しつつあり、2010年時点で基準排出量5800~6800トン程度の艦も建造されている。

[阿部安雄]

『堀元美著『現代の軍艦』(1970・原書房)』『堀元美・江畑謙介著『新・現代の軍艦』(1987・原書房)』『『世界の艦船第442号 特集 90年代のフリゲート』(1991・海人社)』『『世界の艦船第514号 特集 フリゲート 今と昔』(1996・海人社)』『『世界の艦船第598号 特集 今日の中国軍艦 MEKO型フリゲイトの考察』(2002・海人社)』『Stephen SaundersJane's Fighting Ships 2010-2011(2010, Jane's Information Group)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フリゲート」の意味・わかりやすい解説

フリゲート
frigate

艦船の一種。 (1) 古代では主として地中海で用いられた櫂 (オール) または帆で走行する小型の船のこと。 (2) 16~17世紀にスペイン人,ポルトガル人らが用いた小型の高速帆船。 18世紀には戦闘用に用いられ,3本マストで約 30~40門の大砲を搭載していた。巡洋艦の前身。 (3) 第2次世界大戦中の 1942年にイギリス海軍が建造した船団護衛用の艦名。 43年にはアメリカ海軍も 1400t,20knの護衛艦多数を建造しパトロール・フリゲート PFと称し,戦後日本の自衛隊も供与を受けた。その後アメリカは,この種の護衛艦をエスコート・シップといい,大型駆逐艦 DLをフリゲートというようになった。 75年フリゲートは巡洋艦に編入され,外洋護衛艦をフリゲート FFと称するようになり,他国の海軍とその呼称法は,おおむね一致するようになった。イギリス,フランスおよびその他の国のフリゲートも排水量 1100~3000t程度で対潜,対空,護衛任務をもっている。 1000t以下 800t程度の護衛艦,哨戒艦をコルベットといっている。

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