フリゲート(読み)ふりげーと(英語表記)frigate

翻訳|frigate

デジタル大辞泉 「フリゲート」の意味・読み・例文・類語

フリゲート(frigate)

18、9世紀の帆船時代、各国海軍が整備し、偵察・警戒・護衛などに使用した軍艦。
現代の軍艦の艦種の一。対空・対潜の装備をもち、哨戒や船団護衛などに従事する、高速で機動性をもつ駆逐艦や大型護衛艦

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精選版 日本国語大辞典 「フリゲート」の意味・読み・例文・類語

フリゲート

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] frigate ) 軍艦の艦種の一つ一八、九世紀の帆船および蒸気帆船時代は二層甲板、備砲五〇門前後で軽快な運動性を持つ艦。現在では、駆逐艦に準ずる高速力と航洋性を持ち、対潜・対空・船団護衛などに用いられる艦をいう。
    1. [初出の実例]「オセアーンは鉄張の蒸気フリゲートにして四千トン積」(出典:中外新聞‐一七号・慶応四年(1868)四月二五日)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フリゲート」の意味・わかりやすい解説

フリゲート
ふりげーと
frigate

おおむね駆逐艦より小型で基準排水量1500~5000トン程度、対潜、対空、水上打撃力などの機能を備え、速力30ノット前後の軽快で経済的な汎用(はんよう)水上戦闘艦艇。軍艦の一種。元来は帆船時代の艦種名で、戦列艦の次に位し、排水量1000トン前後、3檣(しょう)(檣は帆柱のこと)横帆、1層の砲甲板をもち、24~34門の大砲を備え、戦列艦に比べ速力と航続力が優れた艦をフリゲートとよび、戦場での偵察・通報、私掠(しりゃく)船の掃討、船団護衛、沿岸警備などに用いた。19世紀後半、汽走鋼製艦の時代に入ってフリゲートは巡洋艦へと発展し、19世紀末ごろにはこの名称は使われなくなった。

 第二次世界大戦中の1942年に、イギリスは駆逐艦の不足を補うものとして、洋上でのドイツ潜水艦攻撃から輸送船団を守るために、コルベットより有力な護衛艦である基準排水量1370トン、速力20.5ノットのリバー級River Classを建造して、これをフリゲートと呼称し、約60年ぶりにこの艦種名が近代軍艦に対して復活した。リバー級およびその改良発達型を含めフリゲートは、第二次世界大戦中にイギリス、カナダ、アメリカで多数建造され、対潜能力主体の艦だけではなく、対空戦闘能力重視のものも出現し、これらは戦争遂行上欠くことのできぬ重要な艦種となった。

 戦後イギリスは、駆逐艦より小型で速力24~32ノット、航洋性に富む護衛艦をフリゲートの艦種名に統一し、おおむね対潜能力の向上に重点を置いて逐次建造・整備を図り、ほかの多くの国もこれに倣い、フリゲートは各国海軍兵力の根幹をなす艦種となった。アメリカは、戦時急造艦を整理するとともに、新たに駆逐艦より大型で対潜・対空戦闘能力が高く、指揮・情報機能を強化した艦を建造し、最初これを嚮導(きょうどう)駆逐艦とよんだが、のちにフリゲート(DL)と改称したため、この艦種名称は国により二様の意味をもつことになった。その後アメリカのDLは、対空ミサイル装備などの兵装強化、空母護衛任務艦への原子力推進機関採用などにより、しだいに大型化して巡洋艦なみの規模になったため、1975年に基準排水量5670トン以上の艦を巡洋艦に、それ以下のものを駆逐艦に艦種変更し、従来護衛艦(DE)と呼称していた中速・中型護衛艦と、パトロール・フリゲート(PF)の名称で新規建造中の艦を、新たにフリゲート(FF)に類別し、他国と同一のレベルにそろえた。

 フリゲートは1970年代から、対空・対艦両ミサイル、軽量中口径自動砲、艦と一体化して有機的運用を行う艦載ヘリコプター・システム、高性能情報処理システムなどを採用・装備するようになり、現在では対潜・自艦防空・水上打撃力機能を兼ね備え、艦隊または船団の護衛、対潜掃討、対水上戦、揚陸戦支援、哨戒(しょうかい)、海外警備などにあたる汎用水上戦闘艦艇へと発達を遂げ、対潜ヘリコプターを1~3機搭載するものが多い。

 冷戦終結後は対地打撃力機能も重視されるようになり、これに加えて最近の艦では抗堪(こうたん)性(敵の攻撃に耐えてその機能を維持する能力)向上、対レーダー・ステルス対策、ミサイル発射機の垂直発射システムVLS(vertical launch system)化などの新技術を採用して大型化しつつあり、2010年時点で基準排出量5800~6800トン程度の艦も建造されている。

[阿部安雄]

『堀元美著『現代の軍艦』(1970・原書房)』『堀元美・江畑謙介著『新・現代の軍艦』(1987・原書房)』『『世界の艦船第442号 特集 90年代のフリゲート』(1991・海人社)』『『世界の艦船第514号 特集 フリゲート 今と昔』(1996・海人社)』『『世界の艦船第598号 特集 今日の中国軍艦 MEKO型フリゲイトの考察』(2002・海人社)』『Stephen SaundersJane's Fighting Ships 2010-2011(2010, Jane's Information Group)』

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改訂新版 世界大百科事典 「フリゲート」の意味・わかりやすい解説

フリゲート
frigate

軍艦の一種。時代あるいは国によってもその定義は異なるが,現在ではおおむね駆逐艦よりやや小型の対潜・対空任務に従事する軍艦をフリゲートと呼んでいる。18世紀から19世紀中ごろには,主力となる戦列艦のほかに,比較的小型でしかも快速で航洋性に優れた帆装軍艦をフリゲートと称していたが,この艦種は後に蒸気機関と帆装とを併用するようになり,しだいに大型化し,巡洋艦へと発達していった。20世紀初頭になると,推進機関,兵装の発達により,軍艦の種類は多様化し,戦艦,巡洋艦,駆逐艦等機能別に分類されるようになり,フリゲートという呼称はしだいに使われなくなった。フリゲートの呼称が復活するのは,第2次世界大戦において,イギリス,アメリカ両国がドイツの潜水艦に対抗する手段として,対潜機能に重点をおき,さらに対空防御能力を付加した1500トン級,速力約20ノット程度の護衛艦を大量に建造し,これをフリゲートpatrol frigate(PF)と呼んでからである。

 第2次大戦後,イギリスは対潜専用艦をフリゲートの名称に統一したが,一方,アメリカは戦時急造のフリゲートを逐次処分し,駆逐艦,護衛駆逐艦の整備を進めるとともに,さらに指揮・情報機能を強化した大型の嚮導(きようどう)駆逐艦を建造し,これをフリゲートと呼ぶようになった。この艦種は,ミサイル,原子力推進機関の採用により,ますます大型化し,巡洋艦と同じ規模に発達した。1970年代になると,アメリカは対潜対空護衛艦(オリバー・ハザード・ペリー級)の量産を開始し,従来の護衛駆逐艦を含めて,この艦種をフリゲートと呼ぶことに改め,大型の嚮導駆逐艦は巡洋艦の名称に統一するようになった。この結果,各国ともアメリカの分類に準じておおむね駆逐艦よりやや小型の対潜専用艦,対空専用艦をフリゲートと表現するようになった。ただし,大きさについては,1500トンから3500トン程度までかなりのばらつきが見られる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フリゲート」の意味・わかりやすい解説

フリゲート
frigate

艦船の一種。 (1) 古代では主として地中海で用いられた櫂 (オール) または帆で走行する小型の船のこと。 (2) 16~17世紀にスペイン人,ポルトガル人らが用いた小型の高速帆船。 18世紀には戦闘用に用いられ,3本マストで約 30~40門の大砲を搭載していた。巡洋艦の前身。 (3) 第2次世界大戦中の 1942年にイギリス海軍が建造した船団護衛用の艦名。 43年にはアメリカ海軍も 1400t,20knの護衛艦多数を建造しパトロール・フリゲート PFと称し,戦後日本の自衛隊も供与を受けた。その後アメリカは,この種の護衛艦をエスコート・シップといい,大型駆逐艦 DLをフリゲートというようになった。 75年フリゲートは巡洋艦に編入され,外洋護衛艦をフリゲート FFと称するようになり,他国の海軍とその呼称法は,おおむね一致するようになった。イギリス,フランスおよびその他の国のフリゲートも排水量 1100~3000t程度で対潜,対空,護衛任務をもっている。 1000t以下 800t程度の護衛艦,哨戒艦をコルベットといっている。

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百科事典マイペディア 「フリゲート」の意味・わかりやすい解説

フリゲート

帆船時代に軽快な航洋軍艦を称したが,第2次大戦中,英海軍が船団護衛用に大量建造した対潜・対空艦をフリゲートと呼び,現代では対空,対潜,レーダー警戒,海外警備などにあたる高・中速の航洋艦をフリゲートとしている。その範囲は国によって異なるが,大体従来の巡洋艦駆逐艦で,任務に応じて排水量1000トン程度から1万トン近いものまである。兵装は砲,魚雷,ミサイル,対潜兵器など。米海軍は対空用のオリバー・ハザード・ペリー型,対潜用のノックス型などをもつ。
→関連項目海防艦

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世界大百科事典(旧版)内のフリゲートの言及

【舟∥船】より

…マストの間の三角帆(ステースル)も広く使われ,また軽風時にトップスルを横に延長する形のスタッディングセールもくふうされた。 戦列艦より砲力は劣るけれども高速で航海能力の高いフリゲート艦は重要な補助艦で,通商破壊やその防御,哨戒などに活躍した。トン数は戦列艦の半分程度,帆装形式はほとんど変わらない。…

※「フリゲート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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