コンピューターを対象とし,または利用して行われる犯罪。例えば,データの破壊,コンピューターの不正利用,入力データの改ざん,キャッシュカードの不正利用による金銭の不法領得など。高度情報化社会の到来とともにコンピューターの重要性が飛躍的に増大することによって,従来の刑法規定に解釈上の疑義が生じたり,規定自体の不備が指摘されるようになったこと,また世界各国でもコンピューターに関連する不正行為に対処するための新しい法律が制定される傾向にあることなどから,日本でも1987年の刑法改正によって文書関連の罪,業務妨害関連の罪,詐欺関連の罪に関連する部分について,それぞれコンピューター関連犯罪が新設され,立法的解決が与えられた。文書関連の罪に関しては,例えばキャッシュカードの偽造やその不正使用などのように,他人の事務処理を誤らせる目的で不正データを作ったり,またはそれをコンピューターで処理させようとしたりする行為は〈電磁的記録不正作出罪〉(刑法161条の2)を構成することになった(公的なデータの不正作出に対しては刑を加重)。なおここでいう〈電磁的記録〉とは,いわゆる〈データ〉のことである(7条の2)。業務妨害関連の罪に関しては,コンピューターやデータの破壊・消去・改ざん,不正なデータの入力などによって他人の業務を妨害する行為が,〈電子計算機損壊等業務妨害罪〉(234条の2)として加重的に処罰されることになった。詐欺関連の罪に関しては,偽造プリペードカードの使用や銀行のオンライン上で虚偽の入金データを入力するなどのように,不正なデータの入力・改ざん,コンピューターの不正操作などによって実際に財産上不法の利益を得る行為が〈電子計算機使用詐欺罪〉(246条の2)という新しい犯罪類型を構成するとされるにいたった。なお,技術的に困難な問題もあるが,データそのものに財産的価値を認めるという前提に立つ〈情報自体を盗む罪〉の新設も懸案の検討課題とされている。
執筆者:黒田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報
…セキュリティポリシーsecurity policyと呼ばれる情報セキュリティを考慮したシステムの運用方針の策定,およびその策定にしたがった運用が行われることが望ましい。
[コンピューター犯罪computer crime/電脳犯罪cyber crime]
コンピューター犯罪(サイバー犯罪)とは,一般には,コンピューターをなんらかの形で用いた犯罪というように幅広く捉えられている。オンライン詐欺から,データ破壊に至るまで多種多用である。…
※「コンピューター犯罪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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