改訂新版 世界大百科事典 「ゴシキドリ」の意味・わかりやすい解説
ゴシキドリ (五色鳥)
barbet
キツツキ目ゴシキドリ科Capitonidaeの鳥の総称。この科の鳥は先のとがった太い円錐形のくちばしをもち,頭が大きく,くび,脚,尾が短く,ずんぐりした体つきをしている。脚は対趾足(たいしそく)である。全長10~30cm。羽色は鮮やかな青色,緑色,黄色,赤色に黒色,白色,灰色の混じったはでな色彩で,雌雄は多くの種で同色である。熱帯地方の樹上に単独かつがいですみ,地上に降りることはほとんどない。一般に植物食で,枝から枝を伝って果実,木の芽,花などを採食する。しかし一部の種は昆虫類が主食で,葉間,枝,樹幹で樹上性のアリやシロアリなどを好んで食べている。ゴシキドリ類は,1ヵ所に長い間じっと止まっていて,ひと声鳴くたびに頭をひょいともち上げたり尾を震わせながら単調な声で鳴く。とくに,アフリカやアジア産の種は,熱帯地方の暑い昼間に,金属的でよくひびく単調な声で繰り返し繰り返しいつまでも鳴く習性があり,聞く人をいらいらさせるので,英語ではbrain-fever bird(気を狂わせる鳥)というあだ名がつけられている。繁殖期には,朽ちた高木の幹にくちばしで巣穴を掘るが,土手やシロアリの巣塚に巣穴をつくる種もあり,1腹2~5個の白い卵を巣穴の底にじかに産む。
アフリカ,アジア,南アメリカの熱帯降雨林に約75種が分布する。アフリカにもっとも多く,森林からサバンナ,あるいは半乾燥地帯にまで生息し,半乾燥地帯にすむ種では,くちばしが強くキツツキ類のように堅い枯木に巣穴を掘る。アジア産の種は,鮮やかな色彩をした種が多く,南アメリカ産の種は,もっともはでな色彩をしていて,種によっては雌雄異色である。代表種には,サハラ砂漠以南のアフリカに分布し全長19cmのクロエリゴシキドリ,インドから中国南部に分布する全長33cmの大型種オオゴシキドリ,コロンビアとエクアドルのアンデス山脈中腹に分布しくちばしの大きな全長22cmのオオハシゴシキドリなどがある。
執筆者:齋藤 隆史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報