ミツオシエ(読み)みつおしえ(英語表記)honeyguide

改訂新版 世界大百科事典 「ミツオシエ」の意味・わかりやすい解説

ミツオシエ (蜜教)
honeyguide

キツツキ目ミツオシエ科Indicatoridaeの鳥の総称。この科の鳥は全長12~20cm,くちばしは太くて短く,脚も短いが,強くて鋭いつめがあり,対趾足(たいしそく)である。羽色は上面が褐色,オリーブ色,灰色などで,下面は白色か灰色である。アフリカ,アジアの熱帯降雨林に単独かつがいですみ,樹上や空中で昆虫類をとって食べる。とくにハチ類の幼虫やさなぎ,ハチの巣の蜜蠟を好んで食べる。ミツオシエの名が示すように,少なくともノドグロミツオシエIndicator indicatorとタテジマミツオシエI.variegatusの2種は,人間やラーテル(ミツアナグマ)をミツバチの巣へ案内することで有名である。ノドグロミツオシエの場合は,人間やラーテルの近くへやってきて,尾や翼を開き,尾の白斑や翼の黄斑をみせながらやかましく鳴きたてて,相手の注意をひくような行動をとる。相手が気づくと,その先頭にたち,5~6m飛んで枝にとまり,また鳴きたてる。この行動を繰り返しながら,相手をミツバチの巣まで案内していく。ミツバチの巣のそばにくると,相手が巣をこわしてみつをとり立ち去るまで,近くの枝で静かに待っている。それからハチの巣へいき,幼虫,さなぎ,蜜蠟を食べるのである。ミツオシエ類の皮膚はたいへんに厚いが,これはハチに刺されるのを防ぐためだと考えられている。

 ミツオシエ類のもう一つの変わった習性は,ホトトギス類のように,托卵(たくらん)性であることで,おもに樹洞に営巣するゴシキドリ類,キツツキ類,ムクドリ類の巣に卵を産み込む。抱卵期間は12~16日で,かえった雛はくちばしの先端にある卵歯(らんし)の変化した鋭いかぎ状の突起で,仮親の雛をかみ殺して巣を独占し,35~40日で巣立つ。サハラ砂漠以南のアフリカに12種,アジアに2種が分布する。

 代表種のノドグロミツオシエ(英名blackthroated honeyguide)は全長20cm,上面とのどが褐色をしていて,ほお,外側の尾羽および下面が白い。おもにブッポウソウ目の鳥の巣穴に托卵する。アフリカ中・南部に分布する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミツオシエ」の意味・わかりやすい解説

ミツオシエ
みつおしえ / 蜜教
honeyguide

鳥綱キツツキ目ミツオシエ科に属する鳥の総称。この科Indicatoridaeの仲間は、アフリカに13種、南アジアに2種、計15種がある。全長10~20センチメートルのじみな羽色をした普通の小鳥(足はキツツキと同じ対趾(たいし)足)であるが、次の三つの特異な点で知られる。ただしそれが確実に知られているのはアフリカ産の2、3種にすぎず、主として研究されてきたのはノドグロミツオシエIndicator indicatorについてである。一つ目は、ハチの巣の蜜蝋(みつろう)やカイガラムシの蝋を好んで食べることで、このような蝋は普通の鳥には消化できないが、ミツオシエは腸内の共生細菌の助けによって消化吸収するものと思われる。またこの鳥は、ハチの幼虫をも主食としている。二つ目はラーテル(ミツアナグマ)や現地人に向かって、鳴いたり特別な動作をして注意をひきつけ、野生ミツバチの巣に案内することで(ミツオシエの名はそれに由来する)、ミツアナグマや人がハチの巣を壊して蜂蜜(はちみつ)をとるのを待って、幼虫や巣の蜜蝋を食べる。三つ目はその繁殖習性で、カッコウのような托卵(たくらん)性をもち、おもに樹洞営巣性のキツツキやゴシキドリの巣に托卵するが、孵化(ふか)した雛(ひな)は鋭く曲がった嘴(くちばし)をもち、それで仮親の卵や雛を殺すといわれている。また、少なくとも一種では、数羽の雄が一つのさえずり場所を共有して、そこを訪れる雌と乱婚的に交尾すると報告されている。さらに別の種では、雄はミツバチの巣を中心とした縄張りテリトリー)をもつといわれる。

[浦本昌紀]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミツオシエ」の意味・わかりやすい解説

ミツオシエ
Indicatoridae; honeyguides

キツツキ目ミツオシエ科の鳥の総称。全長 12~20cm。17種からなり,15種はアフリカに,2種はアジアに分布する。羽色は褐色,オリーブ色,黄色などで,一部に赤色部分のある種もいる。は基部が硬くてがっちりしており,趾(あしゆび)は前後に 2本ずつ向いた対趾足をなし,強い爪をもつ。多くは森林に生息する。なお,5種についてはゴシキドリキツツキなどの鳥の樹洞,あるいは土手の穴の巣に托卵することが知られている。一部の種のは,嘴の先が鋭く変形していて,これで托卵相手の鳥の雛をかみ殺して外へほうり出し,巣を独占して仮親に育てられるというカッコウに似た特異な習性をもつ。おもに昆虫食だが,ノドグロミツオシエ Indicator indicator はハチの巣材である蜜ろうを好んで食べ,人間を鳴き声などの行動でハチの巣に導き,蜂蜜をとらせたあとに幼虫などとともに食べる性質がある。実際,アフリカの先住民はこうしてハチの巣をとっているといわれる。

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