サウジアラビア石油施設攻撃(読み)さうじあらびあせきゆしせつこうげき

知恵蔵 の解説

サウジアラビア石油施設攻撃

無人機ドローンなどが2019年9月14日未明にサウジアラビア東部の石油施設2カ所を攻撃した事件。標的になったのは、アブカイククライス(フライス)にある国営企業サウジアラムコの油田・石油処理施設。サウジ国防省は、無人攻撃機18機と巡航ミサイル7発(うち4発が命中)によるものと発表した。ただし、攻撃による負傷者は出なかった模様。
直後にイエメンの武装組織フーシ派犯行声明を出したが、米国はイラン関与を断言し、同月23日には英・仏・独3カ国の首脳も「イランの責任は明確」という共同声明を発表した。攻撃が北西方向から行われたこと、兵器残骸(ざんがい)からイラン製の可能性が濃厚なこと、巡航ミサイルが使用されたことなどが、主な理由とされる。イランは否定しているが、サウジと対立するフーシ派は親イランの組織であることから、多くの軍事専門家も高い確率でのイランの関与を指摘している。
また、イラン革命防衛隊による独自の行動という見方もある。革命防衛隊はイラン革命(1978~79年)の際に設立された部隊で、最高指導者ハメネイ師の指揮下にある。正規軍とは別組織だが、約12~13万人の兵を持ち、国境海峡警備から海外での諜報(ちょうほう)活動まで担っている。ヒズボラをはじめ周辺国のシーア派組織への武器供与も行っており、フーシ派との関係も深い。しかし、いずれも決定的な証拠は出ておらず、英・仏・独も「断定」はしていない。
世界の石油供給量の約5%を占める施設の稼働停止は、世界経済への大打撃になると懸念され、攻撃の直後には原油価格の大幅な高騰を招いた。しかし、世界市場で原油は供給過剰にあったこと、また施設が早期に復旧したことなどから、影響は短期的・限定的なものに止まっている。

(大迫秀樹 フリー編集者/2019年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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