改訂新版 世界大百科事典 「サックリング」の意味・わかりやすい解説
サックリング
John Suckling
生没年:1609-42
イギリスの詩人。ジェームズ1世の宮廷にきわめて近い家柄に生まれる。ケンブリッジ大学卒業後,法律を修めたが,軍人として身を立てることになった。以後,ピューリタン側からの圧力の強まるなかで,一貫して王党派軍人として,また宮廷人として,立場を変えなかった。詩人としては,17世紀前半の英詩における〈王党派詩人〉を代表する一人である。優雅で機知に富み,しばしばシニカルな抒情詩,とくに恋愛詩は,そもそも世俗的な文学というものを信じなかったピューリタン的気風に対立したのみでなく,ダンの伝統に属する同時代の〈形而上詩〉ともまったく異質であった。ただし措辞のなめらかさや表現の優雅さだけにサックリングの詩の特色を見るのも,おそらく片手落ちであろう。しばしば詞華集に収められる幾編かの恋愛詩は,男女の愛の機微に,ひやりとするほど鋭い洞察の視線を注いでいる。
執筆者:川崎 寿彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報