食の医学館 「サプリメント活用法」の解説
さぷりめんとかつようほう【サプリメント活用法】
バランスのよい食事をしているから、サプリメントは必要ないと思われている人も多いでしょう。もちろん食事で必要な栄養素が十分に摂取できれば、それにこしたことはありません。
たしかに「炭水化物(たんすいかぶつ)」「脂質(ししつ)」「たんぱく質」については不足している人は少ないでしょう。
ことに「たんぱく質」は50年前の約2倍、「脂質」も約2倍も摂取されています。しかし、これらの栄養素が体内で活用されるのに必要なビタミン、ミネラルについては、不足している栄養素が多くみられます。
その原因は、食生活の欧米化、外食中心の食事などの食生活の変化による栄養のかたより、促成栽培(そくせいさいばい)、養殖の発達などによる食材そのものの栄養素の変化などがあげられます。
また、急激なダイエットなどのまちがった健康志向も、原因の1つとして考えられます。
これらの乱れた食生活を改善する栄養補助食品として、サプリメントは大きな助けとなります。
また、アレルギー体質などの理由で、必要な栄養を食材から十分にとれない人もいます。
そういった人にとって、サプリメントは重要な栄養供給源になります。
しかし、サプリメントをとっているから不健康な生活をしていても大丈夫ということではけっしてありません。バランスのとれた食生活と適度な運動、ストレスなどをためない健全なライフスタイルがあってこそ、サプリメントは最大の効果を発揮するのです。
《いつとれば効果的?》
これはサプリメントの種類、目的により異なります。ラベルや説明書に明記されているので、それにしたがって摂取します。一般的にいえばビタミン・ミネラル類は食事といっしょか、朝・夕の1日2回がベストです。水溶性ビタミンは一度に多量に摂取しても排出されるだけなので、胃の中で少しずつ溶けるタイムリリース型が有効です。
スポーツ選手などでは、はげしい運動で失われたエネルギーを補い、たんぱく質の分解を抑えるために、炭水化物やたんぱく質のサプリメントを運動直後から1時間くらいまでのあいだにとるのがベストとされています。
リラクゼーションタイプのサプリメントは就寝前がいいでしょう。これらは眠気を催させる成分が含まれている場合もあるので、摂取しての自動車の運転はひかえてください。
《効果がでるにはどれくらいの期間が必要?》
時短がもてはやされる現代、すばやく効果が現れないと不満を覚える人も多いでしょう。たしかに、かぜ薬などは2、3日服用すれば症状が改善します。
しかし、サプリメントは薬ではありません。とくにビタミン・ミネラルの効果が現れるには、最低でも2~3か月は必要といわれています。実際にある研究で、動脈硬化がすすんだ人で、ビタミンEを摂取し続けたグループと摂取しなかったグループとの心臓病発症率のちがいのデータをとったところ、摂取し続けて300日以降から差が現れてきたといいます。短期間で効果が現れないといって、あきらめないでください。
《サプリメントの保管は?》
成分の変質を避けるために、直射日光のあたらない冷暗所で保管するのがいいでしょう。また、製品によっては冷蔵庫で保存するようラベルに書かれているものもあります。注意書きをよく読みましょう。
賞味期限は、開封していなければ製造年月日から2年ぐらいはもつのがほとんどです。これも、ラベルや外箱などに記されていることが多いので、チェックしておきましょう。
なお、食品といっても成分が濃縮されているものがあるので、子どもの手が届かない場所に保管することも忘れてはなりません。
《天然と合成ではどちらが効く?》
天然のものをありがたがる風潮があります。しかし、サプリメントに関しては、栄養素によって天然品のほうがすぐれている場合もありますが、合成品とまったくかわらない場合もあるのです。
ビタミン程度の大きさの分子構造なら合成が可能といわれています。ビタミンCは天然品も合成品も化学的にはアスコルビン酸主体で、安定して合成・生産でき、薬効もかわりありません。もっとも天然品にはフラボノイドなどの微量栄養素が含まれているので、その点がすぐれています。
しかしビタミンCの大量摂取で、病気の予防をしたい場合なら、比較的安価な合成品で十分間に合います。ビタミンEも差はありませんが、分子構造の大きさからやや不安定で、安定して合成させるために少し効果が落ちます。しかしその分、量を補えばいいのですから、合成品でもまったく問題はありません。
もちろんサプリメントによっては、天然からしか抽出できない成分のものもあります。要は目的によって使い分ければいいのです。
《自分に適したサプリメントを見つけるには?》
まずはどんな目的でサプリメントを摂取したいかを確認します。免疫力(めんえきりょく)増強や老化防止ならビタミン類やポリフェノールなど、ダイエットなら体脂肪を燃焼させるものや食物繊維など、また、ストレスを緩和するならリラクゼーション効果のあるハーブタイプなどがあげられます。
その前提となるのが、自分の健康状態や栄養状態を的確に知ることです。健康診断での検査結果に基づいて、医師やメーカーなどの専門家に問い合わせるのもいいでしょう。また、これらの検査や食生活のアドバイス、適切なサプリメントの提示などを専門に行っている業者もあります。なお、ミネラルの不足分についてくわしく知りたければ、毛髪検査があります。重金属による汚染やミネラル分のバランスは毛髪を検査するとわかるからです。
もっと手軽にというならば、サプリメントに関する本や雑誌などにチャート式のチェック項目などがありますので、それを参考にして自分にあったサプリメントを見つけるのも手です。
《摂取するときの注意点は?》
サプリメントは栄養素が凝縮されています。だから過剰摂取すると、かえって危険なものもあります。
ビタミン類では水溶性のものは排出されるので問題ありませんが、脂溶性のものは体内に蓄積され副作用がでることがあります。とくにビタミンA、Dについての過剰摂取は禁物です。ミネラル類は必要量と中毒症状が現れる量の幅が狭いので、摂取量に気を配りましょう。
これらの摂取量上限については、各項を参照してください。
このためには、ラベルに書かれている適量をまもることがたいせつです。数種類を摂取する場合は、重複する栄養素などに注意しましょう。服薬中の人は、薬との相互作用や副作用の問題があるので、医師や薬剤師と相談のうえ摂取してください。また、素人判断で薬をやめ、サプリメントにたよるのは危険です。サプリメントは健康補助食品ではあっても、成分も凝縮されたものなのです。