サボー(読み)さぼー(英語表記)Szabó Magda

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サボー」の意味・わかりやすい解説

サボー(Szabó Magda)
さぼー
Szabó Magda
(1917―2007)

ハンガリーの女性作家。大学でラテン語、ハンガリー語を専攻故郷で高校教師となる。1945年、新政権の役人としてブダペストへ。バビッチの精神を受け継ぐ文芸誌『新月』グループに加わり、詩集『仔鹿(こじか)』(1947)を上梓。社会主義体制になった1949年、受賞の当日バウムガルテン賞を取り消され、職場を解雇される。10年の沈黙の後、1958年、新旧モラル葛藤(かっとう)をテーマとした『フレスコ画』で作家として高い評価を得る。『鹿』(1959)など、モノローグによる女性の内面描写を得意とする筆致で、国際的にも有名。1970年代以降、自分の少女時代を描いた『古井戸』(1971)、母親を主人公に、3代にわたる家族を描き出した『昔風の物語』(1977)、作家として不遇だった夫ソボトカ・ティボルSzobotka Tibor(1913―1982)の回想録『ソボトカの残したもの』(1983)を通して結婚生活を描くなど、自伝的な作品が多かった。故郷デブレツェンへのオマージュ『叫べ、街よ』(1971)などの戯曲ウェルギリウスの『アエネイス』に題をとった『その瞬間』(1990)などの歴史小説、『誕生日』(1962)などの児童文学も多い。

[岩崎悦子]

『工藤幸雄編訳『最新ハンガリー短編集』(1966・恒文社)』『桑島カタリン訳『鹿――ある舞台女優の告白』(1990・恒文社)』『岩崎悦子編訳『トランシルヴァニアの仲間 ハンガリー短編集』(1997・恒文社)』


サボー(Szabó István)
さぼー
Szabó István
(1938― )

ハンガリーの映画監督。ブダペスト生まれ。1956年に映画芸術アカデミーの演出科に入学、卒業製作の短編『コンサート』(1961)で注目される。『夢みる年ごろ』(1964)で長編にデビューし、続く『父』(1966)とともに自伝的色彩の濃い作品を発表。その自由でナイーブな映像感覚によってヤンチョーらとともにハンガリー映画の新しい世代を代表する監督の一人となった。以来『愛の映画』(1970)、『消防士通り二十五番地』(1973)、『ブダペスト物語』(1976)、『コンフィデンス 信頼』(1979)、また旧西ドイツとの合作でアカデミー外国語映画賞受賞の『メフィスト』(1981)や、『レデル大佐』(1985)、『ハヌッセン』(1988)と注目作を発表している。

[村山匡一郎]

資料 監督作品一覧

コンサート Koncert(1961)
夢みる年ごろ Álmodozások kora(1964)
父 Apa(1966)
愛の映画 Szerelmesfilm(1970)
消防士通り二十五番地 Tüzoltó utca 25.(1973)
ブダペスト物語 Budapesti mesék(1976)
コンフィデンス 信頼 Bizalom(1979)
メフィスト Mephisto(1981)
レデル大佐 Colonel Redl(1985)
ハヌッセン Hanussen(1988)
ミーティング・ヴィーナス Meeting Venus(1991)
太陽の雫 Sunshine(1999)
テイキング・サイド Taking Sides(2001)
10ミニッツ・オールダー イデアの森~「10分後」 Ten Minutes Older : The Cello - Ten Minuits After(2002)
華麗なる恋の舞台で Being Julia(2004)
エメランスの扉 The Door(2012)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「サボー」の意味・わかりやすい解説

サボー
Szabó Ervin
生没年:1877-1918

ハンガリーのマルクス主義思想家。大学で法律を学び,1904年からブダペスト市立図書館司書,11年から死まで同館長。22歳から社会民主党に入り左派の立場から指導部を批判。やがて離党してサンディカリスト・グループをつくる。マルクス,エンゲルスの著作の翻訳と解説を行い,その1848年革命論を批判,第1次大戦前のハンガリー思想界の指導者の一人となる。1903年から《20世紀》紙に寄稿。08年にできた〈ガリレオ・サークル〉とも密接な関係をもつ。第1次大戦に反対の立場をとり,ロシア革命後は彼の弟子たちの間から反軍国主義の運動がおこり,共産党に流れる革命的社会主義者が成長した。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サボー」の意味・わかりやすい解説

サボー
Szabó Magda

[生]1917.10.5. デブレツェン
ハンガリーの女流小説家,詩人。 1959年まで小学校教師として働きながら,詩を発表していたが,『フレスコ』 Freskó (1958) ,『子鹿』 Az öz (59) などにより小説家としての文名を確立。その後も多くの作品を発表し,すぐれた心理描写と内的モノローグを駆使したスタイルにより,国の内外で人気を得ている。『ジョーフィカに伝えておくれ』 Mondják meg Zsófikának (58) など,児童文学作品も多い。

サボー
Szabó Dezsö

[生]1879.6.10. コロジュワール
[没]1945.1.5. ブダペスト
ハンガリーの小説家,評論家。下層貴族の出身。言語学者を志望したが,パリ留学ののち教師になり,反ユダヤ主義者として評論活動を始めた。それが原因でナジワーラドに転勤になり,その地でハンガリーの新しい詩に触れ,雑誌『西洋』に評論,小説を発表するようになった。ハンガリー作家協会をつくり,会長もつとめた。代表作は小説『流された村』 Elsodort falu (1919) 。

サボー
Szabó Istvan Nagytádi

[生]1863
[没]1924
ハンガリーの政治家,農民の指導者。富農出身。両世界大戦間におけるハンガリーの最有力政党,小地主党の創立者。 1919年独立政府の無任所相,経済相,ソビエト共和国の崩壊後,農業相を歴任。 20年農地改革を実施したが,ほとんど効果をあげることができなかった。 22年小地主党をキリスト教国民統一党に合流させ,反革命政府の大衆的基盤とした。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android