翻訳|sapodilla
アカテツ科(APG分類:アカテツ科)の常緑高木。チューインガムノキ、チクルともいう。熱帯アメリカ原産で、果樹として、また分泌乳液のチクルをとるために熱帯各地で栽培されている。高さ9~12メートル。葉は長楕円(ちょうだえん)形、暗緑色で光沢があり、質は堅く、長さ4~15センチメートル、1.2~2センチメートルの葉柄がある。花は黄白色で筒状、径0.8~1.2センチメートル、夜間に強く香る。果実は卵形ないし球形で径6~10センチメートル、果皮は褐色でざらつく。果実および種子の形、また味など、植物のカキによく似ている。果肉は赤褐色で、肉質は多少ざらつき、黒砂糖に似た強い甘味があり、味や香りが干し柿(がき)に似ている。種子は3~6個あり、長さは1.5センチメートルほどである。
樹皮に傷をつけて樹液を集め、これを煮つめて天然チクルをつくり、チューインガムの原料とする。コロンブスが1492年新大陸を発見したとき、原地人はすでにチクルガムを噛(か)んでいたという。果実は油で揚げたりして料理され、シャーベットやプレザーブにもされる。樹皮はタンニンを含み、収斂(しゅうれん)剤として薬用のほか、漁網や帆布の染料とする。葉も民間薬に利用される。また、完熟したものは生食される。種子は有毒ともいわれる。
主産地はメキシコ、グアテマラ、ホンジュラスなどで、温暖多湿の気候でよく育ち、海岸に近い低地帯が栽培の適地である。繁殖は実生(みしょう)、接木(つぎき)、取木による。
[星川清親 2021年3月22日]
アカテツ科の常緑高木で,果実を食用とし,また樹液から特異なゴム質を採取する。熱帯アメリカ原産で,樹高は20m余,葉は暗緑色でにぶい光沢があり,長さ4~15cm,幅2.5~6cm,葉腋(ようえき)から出る花は筒状で目だたず,径約1cm,花弁は6枚で黄白色,夜間強く香る。果実は直径5~10cm,褐色で断面はジャガイモか長形のカキに似ている。果実は黄褐色で多汁,干しガキのような香りがし,カキの種子に似た種子が2~6個入っている。生食,缶詰,瓶詰,シャーベットなどにする。果樹として熱帯各地で広く栽培されるが,庭の片隅に植えられていることが多い。樹幹を傷つけると白い乳液が出る。これを集めて煮つめたゴム質が天然チクルで,人間の体温程度の温度で適度に軟化するので,チューインガム原料とする。このためチューインガムノキともいう。15世紀末のコロンブスの新大陸発見のとき,すでに土地の人はこのゴムをかんでいたといわれる。現在は南メキシコ,グアテマラ,ホンジュラスなどからチクルが輸出されている。
執筆者:星川 清親
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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