サルモネラ食中毒(読み)サルモネラしょくちゅうどく(英語表記)Salmonella food poisoning

六訂版 家庭医学大全科 「サルモネラ食中毒」の解説

サルモネラ食中毒
サルモネラしょくちゅうどく
Salmonella food poisoning
(食中毒)

どんな食中毒か

 サルモネラは自然界のさまざまな環境に生息しています。とくにニワトリウシブタなどの家畜が腸管内にこの菌を保菌していて、これらの動物から生産される食品がその糞便などを介してこの菌に汚染されると、食中毒の原因となります。

 サルモネラは血清型別という方法で約2500種に分けられます。なかでもエンテリティディスという血清型の菌による食中毒が非常に多く起こっています。原因食品は鶏卵である場合が大半で、これを原材料とした生菓子や二次汚染による食中毒もよく起こっています。

症状の現れ方

 下痢腹痛嘔吐発熱を主とした急性胃腸炎で、汚染した食品を摂取してから12~48時間程度の潜伏期をへて発症します。ただし、潜伏期間や症状は、摂取した菌の量や患者さんの健康状態、年齢によって変化します。たとえば、小児では比較的少ない菌量でも発症し、場合によっては激しい下痢、強い腹痛、血便などの重い症状を示すこともあります。また、小児に限らず敗血症(はいけつしょう)などを起こして死亡することもあります。

検査と診断

 症状から感染を疑いますが、サルモネラ食中毒と確定するには、実際に患者さんの糞便などから原因となっている菌を分離することが必要です。また、原因となった食品を見つけるために、何を食べたかを調べることも重要です。

治療の方法

 感染初期や軽症の場合は、整腸剤補液による対症療法を行います。しかし、重症化した場合は抗菌薬投与による治療を行います。菌によっては耐性を獲得して抗菌薬が効きにくい場合もありますので、注意が必要です。

予防のために

 食中毒予防の3原則「つけない(清潔)、増やさない(低温保存)、殺す(加熱殺菌)」を守って予防に努めることが第一です。

泉谷 秀昌

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「サルモネラ食中毒」の解説

さるもねらしょくちゅうどく【サルモネラ食中毒】

[どんな病気か]
 サルモネラ菌は2000種類くらいあり、そのうち腸チフス菌とパラチフスA菌は感染力が強いだけではなく、経口感染したのち血液中に入って増殖(ぞうしょく)し、発熱その他の重い全身症状をおこすので、腸チフス、パラチフスA(「パラチフス」)という独立した病気として扱われています。それ以外のサルモネラ菌は、経口(けいこう)感染後、腸で繁殖(はんしょく)し毒素を生産します。この毒素のために小腸の粘膜(ねんまく)に炎症が生じ、発熱、嘔吐(おうと)、下痢(げり)がおこります。これがサルモネラ食中毒です。
●多発する季節と年齢
 多発するのは、8月をピークとする5~10月の間ですが、年間を通じての発生がみられます。集団発生のほか、家族内発生や散発的な発生もあります。
 かかりやすいのは5歳以下の幼児ですが、すべての年代の人が要注意です。
[症状]
 潜伏期は10~20時間です。おとなは、発熱、嘔吐、腹痛、下痢などですが、嘔吐はなく、下痢が主になることもあります。ふつう、1週間ほどで回復しますが、ショック状態におちいることもあります。
 乳幼児は、とくにけいれん、ショックをおこし、重症になりがちです。
[治療]
 輸液や化学療法薬の内服をします。症状が消えても、長期間、排菌(はいきん)が続くことがあるので、予防策を講じることがたいせつです。
[予防]
 サルモネラ菌は、病人や保菌者の糞便(ふんべん)中に含まれています。イヌ、ネコ、ニワトリ、ネズミ、ゴキブリは、もっているだけではなく、運搬もします。これらのものに、食品を汚染されないように貯蔵しましょう。
 食肉や鶏卵には菌が付着していることも多いので、加熱して食べるようにしましょう。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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