サンタマン(英語表記)Antoine Girard, sieur de Saint-Amant

改訂新版 世界大百科事典 「サンタマン」の意味・わかりやすい解説

サンタマン
Antoine Girard, sieur de Saint-Amant
生没年:1594-1661

フランスの詩人。成功した船乗りの子としてノルマンディー地方に生まれる。若くして大航海に加わり,アメリカ,インドにまで旅行した。1618年パリに赴き,何人もの大貴族の庇護を受け,ビヨーらの詩人と交わり,自らも詩作にいそしんだ。27年ころからさまざまの使節団に随行してヨーロッパ諸国を歴訪したが,51年以降はパリに落ち着いた。彼の詩作は,人里離れた荒涼たる風景を歌った幻想的な詩編孤独》から,マリーノ風の技巧的な神話詩,酒やチーズさらにメロンをたたえた嘱目の詩,風刺詩叙事詩《救われたモーゼ》ときわめて幅が広いが,いずれも鋭い言語感覚と豊かなイメージを特徴としている。古典主義の理論家ボアローに酷評され,19世紀にゴーティエによってロマン派の先駆者の一人として再発見されるまで顧みられなかったが,今日ではバロック期の代表的詩人の一人に数えられている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サンタマン」の意味・わかりやすい解説

サン=タマン
Saint-Amant, Marc Antoine Gérard, sieur de

[生]1594.9.30. ルーアン近郊
[没]1661.12.29. パリ
フランス・バロック期の詩人。プロテスタントとして生れたがのちカトリック改宗。青年時代からイタリア,イギリス,ポーランド,アフリカ,アメリカなどを旅行したという。ビュルレスク (道化) 調の詩を残し,後世からグロテスク詩人の一人に数えられた。その詩風はラブレーを思わせる奔放さをもち,美食の楽しみや旅行の経験を歌ったものが多い。代表作は風刺詩『孤独へのオード』 Ode à la solitude (1640) ,『おかしなローマ』 La Rome ridicule (43) ,叙事詩『救われたモーセ』 Moïse sauvé (53) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サンタマン」の意味・わかりやすい解説

サン・タマン
さんたまん
Marc Antoine Girard, sieur de Saint-Amant
(1594―1661)

フランスの詩人。ルーアンの近くの新教徒の家庭に生まれたが、のちにカトリックに回心。信仰心の厚い教養人であると同時に人生の享楽者でもあった。イタリアの詩人マリーノ風な詩『孤独』La Solitude(1618)から出発し、酒歌や風刺詩もつくったが、代表作は聖書から題材を得た叙事詩『救われしモーゼ』Moïse sauvé(1653)。絵画的な詩想に富む詩人で、1634年にはアカデミー・フランセーズの初代会員に選ばれている。

[目黒士門]

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