フランス学士院Institut de Franceにある五つのアカデミーのうち最古のもの。1633年ごろ,詩人コンラールValentin Conrart(1603-75)の家で文芸同好会のような集りがあるのを知った宰相リシュリューが,これを公的機関に制定し,フランス語の統一と純化という文化政策の一環に組み入れようとした。同会は〈アカデミー・フランセーズ〉の名で35年に正式に発足。72年,国王ルイ14世自身が庇護者となって以来,歴代の国家元首の管轄下に置かれている。会員は40名。終身制で〈不滅の40人〉と呼ばれ,フランス国籍所有者に限られ,例会出席のためパリ在住を義務づけられている。文学者に限定されないのも特徴の一つである。欠員が出ると立候補者の中から現会員が秘密投票で補充する。新会員は入会演説で前任者をたたえるならわしがある。アカデミー・フランセーズに入会することはフランス国民最高の栄誉とされているが,女性会員は1980年に選ばれたマルグリット・ユールスナールが最初である。歴史的には,18世紀後半百科全書派の牙城となり,大革命で廃止,1803年に復活後,19世紀は自由主義者とカトリック保守派の争いの場になるなど,数々の話題を提供した。現在は終身書記と行政委員会によって運営され,小説,詩,批評など120種にものぼる賞を与えている。本来の目的は,創設以来の規約にもあるように,国語辞典の編纂と文法の制定が主たる事業で《アカデミー辞典》は1694年の初版から1932年までに8版を重ね,現在第9版を準備中。文法書は1932年と33年に日の目を見るも,不評であった。当代一流の文学者を選出するはずのアカデミー・フランセーズではあるが,モリエール,ディドロ,ボードレールなどの大物を迎え入れていないところから,その保守的性格を皮肉る向きも少なくない。
執筆者:鷲見 洋一
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フランス翰林院(かんりんいん)。フランス学士院Institut de Franceを構成する五つのアカデミーのうちもっとも古くて権威がある。1635年に宰相リシュリューによりフランス語の保存と純化を目的として創設され、「不滅の人」ともよばれる40名の終身会員により構成される。物故者が出ると、立候補者のなかから全会員の投票で後継者を選定するが、当代の代表的文人、学者が選ばれることが多い。『アカデミー・フランセーズ国語辞典』Le Dictionnaire de l'Académie Françaiseの編集がおもな仕事で、1694年の初版以来第9版(1992)まで刊行されている。編集作業は毎週木曜日の定例会合で行われている。ほかに、1932年、1933年には文法書を出版したことがあり、また各種の賞の選考や授与も行っている。歴代の会員には、レビ・ストロース、イヨネスコ、グリーン、セール、カレール・ダンコースHélène Carrère d'Encausse(1929―2023)らがいる。
[支倉崇晴]
『Jean-Paul CaputL'Académie Française(1986, Presses Universitaires de France, Paris)』
ルイ13世の治世下,1630年前後から,詩人コンラールの家に文学者たちが集まっているのを宰相リシュリューが知り,これを公的な機関として保護することを望んだ。1634年にアカデミー・フランセーズが創設され,翌35年には国王の勅許状によって公式に設立された。動詞の活用や正書法なども確立していない当時の状況のなか,フランス語に確かな規準を与えることがその役割として示された。したがってフランス語辞書の編纂が主たる役割となるが,1694年の初版の刊行以降,1718年(2版),40年(3版),62年(4版),98年(5版),1835年(6版),78年(7版),1932-35年(8版)と版を重ね,現在9版(1巻1992年,2巻2000年,3巻2011年)が刊行中である。終身の会員数は40名で,欠員が生じた場合には,現会員による選挙(投票数の絶対多数)によって新会員が選出される。フランス学士院を構成する五つのアカデミーの一つ。
著者: 白鳥義彦
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1635年リシュリューによって組織された文学の学士院。フランス語によるヨーロッパの文化的制覇という国家目的と結合していた。フランス革命後,他部門のアカデミーとともに,フランス学士院へ統合される。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…フランス学士院Institut de Franceにおいて国語国文学の分野を担当し最古の歴史をもつアカデミー・フランセーズが,その主要な任務のひとつとして編集・発行してきた国語辞典(フランス語辞典)。初版はアカデミー発足以後60年の歳月を費やして完成し,1694年,国王ルイ14世に献じられているが,以後18~19世紀を通じてたびたび改版され(1718,1740,1762,1798,1835,1878),最後のものは1932‐35年の第8版で,現在第9版を準備中である。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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