シクロヘキサノン(読み)しくろへきさのん(英語表記)cyclohexanone

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シクロヘキサノン」の意味・わかりやすい解説

シクロヘキサノン
しくろへきさのん
cyclohexanone

脂環式ケトンの一つ。フェノールをニッケル系触媒を用いて水素化する方法によっても得られるが、1939年アメリカのデュポン社により開発されたシクロヘキサン酸化による合成法が工業的製法主流となっている。同法では、シクロヘキサンをコバルト系触媒やホウ酸の存在下で空気中の酸素により酸化してシクロヘキサノンシクロヘキサノールの混合物を得ている。ハッカに似た香りをもつ無色液体で、多くの有機溶剤と任意の割合で混じり合い、水にもかなり溶ける。6,6-ナイロンの原料であるアジピン酸や6-ナイロンの原料であるカプロラクタムの合成原料となるので、ナイロン合成繊維の製造の中間体として重要である。このほかに、アセチルセルロース農薬塗料などの溶剤としても使われている。

[廣田 穰]


シクロヘキサノン(データノート)
しくろへきさのんでーたのーと

シクロヘキサノン

 分子式 C6H10O
 分子量 98.1
 融点  -32℃
 沸点  156℃
 比重  0.9478(測定温度20℃)
 溶解度 150g/dm3(水10℃)
 屈折率 (n)1.45203

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シクロヘキサノン」の意味・わかりやすい解説

シクロヘキサノン
cyclohexanone

シクロヘキサンのケトン。化学式 C6H10O 。特異臭をもつ液体。沸点 156℃。シクロヘキサノールの酸化によって得られる。水,アルコールなどに可溶硝酸などの強い酸化剤によって開環してアジピン酸を生じる。また,シクロヘキサノンオキシムのベックマン転位によってカプロラクタムが生成する。6-ナイロン,6,6- ナイロンの製造中間体である。

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