日本大百科全書(ニッポニカ) 「シャーロック・ホームズ」の意味・わかりやすい解説
シャーロック・ホームズ
しゃーろっくほーむず
Sherlock Holmes
イギリスの作家コナン・ドイルの創作した世界的名探偵で、名探偵の代名詞的存在である。1887年に『緋色(ひいろ)の研究』で初登場。抜群の推理力の持ち主であるうえに解剖学、化学、数学、法律にも詳しいが、通俗文学の知識は範囲が限られ、天文学、政治学、哲学には精通していない。細い鉤(かぎ)鼻、鋭いまなざしをもつ顔は鷹(たか)のようで、身の丈6フィート強の痩身(そうしん)。拳闘(けんとう)、フェンシング、棒術に優れている。思索するときはバイオリンをかき鳴らし、安煙草(たばこ)と臭い化学実験のにおいをまき散らし、うつ状態になると1日中口をきかず、コカインをときにたしなむ弱みをもつ。ホームズの助手でもあり彼の活動の記述者でもあるワトソン医師Dr. Watsonは友情に厚い心温かな男で、美人に対してつねに賛美を惜しまない。
作者ドイルは、ホームズと決別しようと、24編目の短編において大悪人モリアーティ教授ともども滝つぼに落ちて死んだことにしたが、読者の要望に抗しがたく『シャーロック・ホームズの帰還』(1905)で復活させている。ホームズの居所であるロンドンのベーカー街221B(実在しない)には、いまでもホームズあての手紙が舞い込むという。ホームズの研究家やファンはシャーロッキアンSherlockianといわれ、世界各国に多数を数える。
[梶 龍雄]
『小池滋監訳『シャーロック・ホームズ全集』全21巻(1982~83・東京図書)』▽『日本シャーロック・ホームズ・クラブ編『シャーロック・ホームズ雑学百科』(1983・東京図書)』