日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュピッテラー」の意味・わかりやすい解説
シュピッテラー
しゅぴってらー
Carl Spitteler
(1845―1924)
スイスの詩人。早くから無神論的な傾向をみせていたが、神学を学んで牧師を務めたのち、ロシアに行き、8年間教師としての生活を送る。帰国後新聞編集に携わるが、1893年以降はルツェルンで創作に専念した。このノーベル賞詩人の活動は多方面にわたっているが、本領は叙事詩にある。ショーペンハウアーとニーチェの影響を受け、芸術家と市民の対立を意識した詩人は、美を求めるエリートとしての英雄的な人物を古典的な叙事詩に表現しようとした。『プロメテウスとエピメテウス』(1881)は、あえて世界を支配する権力を拒否しても「魂」を守ろうとする高貴なプロメテウスを歌う作である。『オリンピアの春』(1900~05)は、過酷な運命を克服するギリシアの神々を描きつつ、ペシミスティックな宇宙像と幸福の雄々しい断念を語っている。1919年ノーベル文学賞受賞。
[岩村行雄]
『高橋健二訳『イマーゴー』(『ノーベル賞文学全集3』所収・1977・主婦の友社)』