シンボルグラウンディング問題(読み)シンボルグラウンディングモンダイ

デジタル大辞泉 の解説

シンボルグラウンディング‐もんだい【シンボルグラウンディング問題】

symbol grounding problem》⇒記号接地問題

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日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

シンボルグラウンディング問題
しんぼるぐらうんでぃんぐもんだい

人工知能AI)の知識表現において、そこで使われる記号を実世界の実体がもつ意味に結び付けられるかという問題。「記号接地問題」ともいう。哲学者のスティーブン・ハルナッドStevan Harnad(1945― )がAIには意味が理解できないという論証一環として提示した問題。たとえば、一度食べたことのある人は、「梅干し」と聞けばその味を想起して口の中に唾液(だえき)が出てくるなどの現象が起こるが、AIにはそういった想起ができない。ある意味で、記号処理におけるフレーム問題や、常識推論ができないことなどのさまざまな問題と同根である。つまり、身体性をもたず、環境と切り離された形で記号の処理をしようとするために起こる問題である。外部世界にあるものを、内部記号に置き換えた時点で外部との接地が切れてしまう。実世界と相互作用するロボットなどでは、ロボットなりの記号接地ができるはずであるが、人間と異なる体をもったものの記号接地は、人間のものとは異なるはずである。

 最近ではディープラーニング深層学習)によって記号と画像関係を学ばせ、記号表現を画像に落とすことができるようになってきているので、一部の記号接地は学習可能になりつつある。

[中島秀之 2019年8月20日]

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知恵蔵mini の解説

シンボルグラウンディング問題

未熟な人工知能は物事名称を記号(シンボル)として学習はできるが、それを実世界における意味と結びつけること(グラウンディング)ができないという問題。記号接地問題とも呼ばれる。1990年、認知科学者のスティーブン・ハルナッドによって命名された。たとえば、人間は「ウマ」と「縞模様」を別個に知ったうえで「シマウマ」という名称を示されれば、縞模様をもつウマであることを想像することができる。だが、従来の人工知能はウマと縞模様の本質を理解しないため、両者を結びつけて想像することができない。今後、人工知能が与えられた情報から潜在的な特徴を抽出して判断能力を高めていくディープラーニングと呼ばれる機械学習の進化によって、この問題が克服されることが期待されている。

(2019-8-29)

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