改訂新版 世界大百科事典 「語形成」の意味・わかりやすい解説
語形成 (ごけいせい)
種々の方法によって新語を作ることをいう。通例3種に分ける。(1)複合(合成ともいう) 従来存在していた2単語以上を結合して新語を作ること。たとえばblack bird(黒い鳥)は2語であるが,blackbird(ムクドリ)は1語であって複合である。ホン・バコ,クズ・カゴは複合語(合成語)である。何が複合語であるかは,どれを〈一単語〉とみるかにかかっている。〈サカナ〉は,本来は〈サカ(酒)・ナ(菜)〉であったが,今日では1語であり複合語とは認められない(これを〈仮装複合語〉のごとく呼ぶのは歴史的観点より見たものである)。(2)派生 語幹に接辞(接頭辞,接尾辞など)を付して新語を作ること。接辞は独立の単語ではないため,複合と区別される。たとえば〈赤さ〉は,〈サ〉という接尾辞を形容詞語幹〈アカ〉に付して派生された新語であった。英語fresh-ness,nois-yも,-ness(名詞を作る),-y(形容詞を作る)という接尾辞を付して派生されている。英語progressは,もとラテン語pro-(〈前ヘ〉)+gress(〈行くこと〉)からであるが,今日では派生語と見ず1語と見るべきであろう。それに対してpro-American(〈親米の〉)においては,pro-が今日なお造語力をもつ接頭辞であるため,派生語である。このようなpro-や,前記の-ness,-yなどを〈生きた接辞〉という。また逆形成back-formationという現象もあり,それはたとえば英語editorは,従来存在しなかった動詞editに,接尾辞-orがついたと誤解され,動詞editが新たに作られた。ふつうの派生の逆の手順である。また〈卒論〉(〈卒業論文〉の略),パソコン(〈パーソナル・コンピューター〉の略)などは,短縮である。(3)語根創成 種々の方法によりまったく新たに語根を作るもの。〈コダック〉が古典的な例であるが,現代の商業文明にあってほとんど無数の商品名が創成されている。
執筆者:三宅 鴻
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報