ジムグリガエル(その他表記)narrow-mouthed toad

改訂新版 世界大百科事典 「ジムグリガエル」の意味・わかりやすい解説

ジムグリガエル
narrow-mouthed toad

後肢で土を掘り,巧みに潜るジムグリガエル(ヒメアマガエル)科ジムグリガエル属Kaloulaに属するカエルの総称。いずれも頭部が小さくて吻(ふん)部がとがり,胴がずんぐり形で,背面から見るとほぼ三角形に見える。体色は全体に褐色を帯びる。代表種であるアジアジムグリガエルK.pulchra体長5~7cm,中国南部,インドシナ,東南アジアに分布し,日本でも各所で飼育され,目に触れる機会が多い。頭部は小さく,手を触れると胴を膨らませて四肢を突っ張る。昼間は地中に潜っており,つかみ出すと,後ずさりして後肢で土を掘りすぐに隠れてしまう。後肢のかかと部分には土掘り用の突起(内蹠瘤起(ないせきりゆうき))が発達している。産卵一年中行われ,大雨で生じた水たまりなどに産む。

 近縁の南アフリカ産のフクラガエル属Breviceps前者に類似し,極端に頭部が小さく,四肢も短く,胴を膨らませると風船のようになる。アフリカジムグリガエルB.adspersaは体長5cm,まったく水に入らず泳ぎもできない。少数の大粒卵を石の下などに産む。
カエル
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジムグリガエル」の意味・わかりやすい解説

ジムグリガエル
じむぐりがえる / 地潜蛙
[学] Kaloula borealis

両生綱無尾目ヒメアマガエル科のカエル。中国の揚子江(ようすこう)付近から朝鮮半島にかけて分布する。体長約4センチメートル。背面はオリーブ色で、不規則な暗斑(あんはん)が散在する。腹面は紫を帯びた黄色。ずんぐりした体形で目は小さい。後肢は短いが、足裏の内側の隆起が大きく発達し、これを用いて地中に潜る。夏期の大雨の夜に一時的な水たまりに産卵する。卵はばらばらに水面に浮く。雄の鳴き声は大きい。胚(はい)の発生は速く、半月ほどで変態する。この属(ジムグリガエル属)は東南アジアに広く分布し、本種の分布が北限である。

倉本 満]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジムグリガエル」の意味・わかりやすい解説

ジムグリガエル
Kaloula borealis; northern narrow-mouthed toad

カエル目ヒメアマガエル科。体長 5cmぐらい。体は緑色がかった淡褐色で,横腹と肢に黒っぽい網目模様がある。土中に穴を掘ってひそみ,繁殖期にも穴の中で鳴いていることが多い。雄と雌とが「めーんこん」と鳴きかわすので,一名メンコンガエルと呼ばれる。産卵は一時的な水たまりなどで行われ,卵は1個ずつばらばらで,成育が急速に進む。中国北東部から朝鮮半島にかけて分布する。

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