改訂新版 世界大百科事典 「ジョルダン曲線」の意味・わかりやすい解説
ジョルダン曲線 (ジョルダンきょくせん)
Jordan curve
閉区間[0,1]から空間への連続写像があるとき,その像を曲線といい,0の像および1の像をこの曲線の端点という。端点の一致する曲線を閉曲線といい,t(0≦t<1)の像がすべて異なるような閉曲線をジョルダン曲線,または単一閉曲線という。したがってジョルダン曲線とは自分自身と交わらない閉曲線で,円周と同相となる図形ということができる。ジョルダン曲線については,ジョルダンの曲線定理と呼ばれる次の定理が有名である。〈平面上にジョルダン曲線Cがあれば,平面からC上の全部の点を除いた残りは,ちょうど二つの連結した部分から成り立っていて,これらの部分の一つから他の部分へいくには必ずCをよぎらなければならない〉。この定理はおおざっぱにいえば,平面上のジョルダン曲線は平面を内部と外部のちょうど二つの領域に分かつことを主張するもので,Cが楕円や長方形の周の場合には明白であり,Cが図1や図2のような曲線の場合は明白度は少し薄れるけれど,図が描けている以上は容易に確かめることができる。しかしながら,ジョルダン曲線の中には接線が一つも引けず,したがって図で表しえないようなものも存在するので,上の定理は必ずしも明白とはいえないのである。そこで一見自明と思われる上の定理も証明が必要とされるわけであるが,その証明となると意外にむずかしい。ジョルダンの曲線定理はジョルダンの《解析学教程》(1893)で初めて述べられ,かつ証明が与えられたが,決して簡単とはいえないその証明も完全なものではなかった。この定理は現今では代数的位相幾何学の知識を用いて比較的簡単に証明できるが,初期のころの厳密な証明はまったく複雑なものであった。ただし,多角形の周や,接線の傾きが連続的に変わるジョルダン曲線のように,応用上よく現れる曲線の場合のこの定理は,初等的にもわりあい簡単に証明することができる。
執筆者:中岡 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報