ジンプリチシムス(英語表記)Der abenteuerliche Simplicissimus Teutsch

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジンプリチシムス」の意味・わかりやすい解説

ジンプリチシムス
Der abenteuerliche Simplicissimus Teutsch

ドイツの作家グリンメルスハウゼンの小説。5巻。 1668年刊 (本には 1669年と印刷されている) 。原題『冒険好きのジンプリチシムス』。『阿呆物語』の訳名でも知られる。農家で育ったジンプリチシムス (「大馬鹿者」の意) と呼ばれる無知で世間知らずの少年が,森の中で隠者から教育を受けたのち世間に出て,小姓,道化役者をつとめたり,兵隊として略奪強盗を働いたり,捕虜となったりのさまざまな体験を重ね,世界を知るようになるが,結局現世無常を悟り,隠者として山にこもる。のち第6巻を加え,心の平和を求めてエルサレム巡礼の旅に出かけ,途中嵐のため南海孤島に漂着して,そこで平安を得て生涯を終えるまでを語る。スペインの「悪者小説」の流れをくみ,三十年戦争時代の混沌とした社会での一人の人間の成長と魂の救済を描いたドイツ教養小説の傑作の一つ。長らく無視されていたが,ロマン派によって再評価された。

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