日本大百科全書(ニッポニカ) 「スジハナダイ」の意味・わかりやすい解説
スジハナダイ
すじはなだい / 筋花鯛
one-stripe anthias
[学] Pseudanthias fasciatus
硬骨魚綱スズキ目ハタ科ハナダイ亜科に属する海水魚。八丈島、伊豆大島、相模湾(さがみわん)から和歌山県南部、高知県柏島(かしわじま)、鹿児島県竹島を経て沖縄県西表島(いりおもてじま)など西太平洋沿岸域、山口県の日本海沿岸域、台湾南部、グレート・バリア・リーフ、トンガ、紅海、南アフリカなどの海域に広く分布する。体は楕円(だえん)形で、側扁(そくへん)する。両眼間隔域は盛り上がり、その幅は眼径より広い。上顎(じょうがく)の後端は幅広く拡大し、瞳孔(どうこう)の後縁下に達する。上顎歯は2列からなり、外列歯は犬歯状で、内列歯はきわめて小さい。上顎には先端の各側と、後方に後ろ向きの1対(つい)の犬歯がある。下顎歯は小さく、下顎の前端に1対と後方の各側に1本の犬歯がある。鋤骨(じょこつ)（頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨）と口蓋骨に小さい歯の幅狭い絨毛(じゅうもう)状歯帯があり、鋤骨歯の歯帯は三角形。舌上には歯がない。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の隅角(ぐうかく)部は丸く、上縁に細かい鋸歯(きょし)があるが、下縁は円滑。間鰓蓋骨と下鰓蓋骨の縁辺は鋸歯状。主鰓蓋骨に扁平(へんぺい)な3本の棘(きょく)があり、中央棘はもっとも長い。体は櫛鱗(しつりん)で覆われるが、口唇と喉部(こうぶ)には鱗(うろこ)がない。背びれと臀(しり)びれの基底部は鱗で覆われる。側線有孔鱗数は41～45枚で、背びれ起部から側線までに7枚、臀びれ起部から側線までに17枚の鱗がある。側線は緩く曲線を描き、ほとんど体の背縁に沿って走る。背びれの棘部と軟条部の間に欠刻（切れ込み）がない。背びれの第3棘はもっとも長い。臀びれ第2棘は第3棘よりわずかに長くて強い。胸びれは頭長よりわずかに長い。腹びれの軟条は糸状に伸長しない。尾びれは深く湾入し、両葉は長く伸長する。体は雄では桃赤色、雌では橙赤(とうせき)色。体側に特徴的な1本の白く縁どりされた赤色の縦帯が走る（この縦帯が消失した個体も観察されている）。吻端(ふんたん)から目の下を通って鰓蓋に至る赤色の斜帯がある。雄は頭部や尾部などに青色の婚姻色を発現させる。水深約15～80メートルの岩礁域やサンゴ礁域に小さい群れで生息する。体長は約15センチメートルになる。
［尼岡邦夫 2022年5月20日］
