日本大百科全書(ニッポニカ) 「スタージョン」の意味・わかりやすい解説
スタージョン(Nicola Sturgeon)
すたーじょん
Nicola Sturgeon
(1970― )
スコットランド自治政府第5代首相(First Minister)、初の女性首相でもある。1986年にスコットランド国民党(SNP:Scottish National Party)に加入。当時のスコットランドは、イギリスのサッチャー政権が進めた経済構造改革により失業者が増大するなど大きな打撃を受けており、スタージョンはスコットランドが繁栄する唯一の手段がイギリスからの独立であると確信したという。グラスゴー大学を卒業後、事務弁護士に従事し、1999年のスコットランド議会選挙でグラスゴー比例区より初当選し、政治家としてのキャリアをスタートさせる。2007年からは、グラスゴー市のガバンGovan選挙区から選出され、今日に至る。労働党・自由民主党連立政権の閣僚に対する論戦や、世論への発信力の高さから、早くから彼女の政治的資質は党内外から評価を得ていた。
2004年、党首選に立候補するものの、その後立候補を取り下げ、アレックス・サモンドAlex Salmond(1954― )を支持した。その後党首に選出されたサモンドの下で副党首に就任した。2007年にSNPが初めてスコットランドで政権党となった際、副首相兼保健医療担当大臣を担当した。保健医療担当大臣時には、SNPの選挙公約であった救急外来診療閉鎖計画の見直しや薬の処方箋(しょほうせん)代の無料化などを実行した。
2014年9月に行われたスコットランドのイギリスからの独立を問う住民投票のキャンペーン期間、独立賛成派の代表的立場として、討論や演説、メディアを通じて、その主張を幅広くアピールした。結果として独立は否決されたものの、彼女の政治的手腕は高く評価され、幅広い人気を博した。
住民投票の結果を受けて、首相サモンドが辞任を表明した後、2014年11月、スタージョンはスコットランド自治政府首相とSNP党首に就任した。また、住民投票の後もSNPの党勢は拡大し、党員数は10万人を超えるほど急増した。こうした状況の下、スタージョン個人の人気の高さも作用し、2015年のイギリス総選挙ではスコットランド域内の59議席中56議席をSNPが占めるという歴史的な勝利を収めた。また、2016年のスコットランド議会選挙でも、単独過半数を若干下回ったもののSNPが第一党となり政権を維持した。
二度目の独立を問う住民投票の実施については、慎重姿勢を保っていた。ところが、2016年6月に行われたイギリスのヨーロッパ連合(EU)離脱を問う国民投票で、イギリス全体が離脱多数であったのに対してスコットランド域内では残留多数となった結果を受けて、再度の独立を問う住民投票の実施をイギリス政府の首相メイに要求した。今後、イギリス政府がEUから離脱する条件交渉が具体化するなかで、スタージョンが率いるSNP政権がどのように独立運動を盛り上げてゆくのかが注目される。私生活では、2010年にSNPの事務総長と結婚している。
[山崎幹根 2018年1月19日]
スタージョン(Theodore Sturgeon)
すたーじょん
Theodore Sturgeon
(1918―1985)
アメリカのSF作家。ニューヨーク生まれ。正規の学歴はなく、さまざまな職業を転々としたあげく1939年からSF界に登場した。幻想派といわれるように、ハードSFや科学技術的なテーマとは無縁で、SFという枠組みのなかで心理小説風の幻想世界を展開する特異な作家である。国際幻想文学賞を受けた代表的な長編『人間以上』(1953)は6人の異様な子供たちが集まってゲシュタルト生命という一個の超存在を形成する物語。『夢見る宝石』(1950)は宇宙からやってきた水晶生物から生まれた水晶人の子供が主人公となり、善と悪、極大(マクロ)と極小(ミクロ)が混合した一種独得の観念性が基調となっている。このように彼は好んで子供や知的障害者、あるいは思春期の男女を主人公にして愛と性と孤独の内面描写をする。ほかに『原子力潜水艦シービュー号』『きみの血を』などの長編、短編集『奇妙な触れあい』『一角獣、多角獣』などがある。
[厚木 淳]
スタージョン(William Sturgeon)
すたーじょん
William Sturgeon
(1783―1850)
イギリスの電気学者。靴製造徒弟を経て1802年から18年間、37歳まで軍務につく。除隊後、靴屋業を営むが、軍隊勤務中からの自然科学の勉学を続け、実験器具もくふうし、学校などで巡回科学講演を行う。1824年東インド会社軍事大学講師、1840年から4年間マンチェスターで実際科学の講師。1823年軟鉄電磁石を発明、王立技術協会から銀賞を受けた。1830年電池の亜鉛板の水銀アマルガム被覆法を考案したほか、電磁回転機器も発明。1836年イギリス最初の電気雑誌『Annals of Electricity』を月刊で創刊した。
[木本忠昭]