ステラ(読み)すてら(英語表記)Joseph Stella

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ステラ」の意味・わかりやすい解説

ステラ(Frank Philip Stella)
すてら
Frank Philip Stella
(1936―2024)

アメリカの画家マサチューセッツ州モールデンに生まれる。フィリップスアカデミー絵画を学んだのち、プリンストン大学美術史を修める。1950年代末「黒の絵画」(ブラック・ペインティング)でデビューするが、それは抽象表現主義のオール・オーバーの空間を継承するとともに、演繹(えんえき)的な方法によって、形体と色彩を組み合わせる造形的構成を否定し、ミニマル・アート先駆と目される。1960年代中ごろからその展開として、幾何学的形体をもつ単色のシェープド・カンバスによる絵画を制作、さらには分度器状の形体を組み合わせる多色の絵画へと変化する。1970年代後半からレリーフ状の構築物に向かい、過去の芸術を参照、咀嚼(そしゃく)しながら、無機的、有機的な形体を混交した鮮明な色彩によって感情的な表現を試みる。さらに1990年代には、コンピュータも駆使しながら、鋳造パーツを複雑に組み合わせた巨大な立体作品や、建築的スケールの公共空間のプロジェクトなども手がけている。彼の作品は自己破壊的といわれながら、つねに歴史を参照しながら新たな空間構造の追求を行っていた。

藤枝晃雄・小西信之]

『フランク・ステラ著『フランク・ステラ』(1991・新潮社)』『『現代美術第18巻 ステラ』(1993・講談社)』『ディックアート編『フランク・ステラ――総合芸術プロジェクト』(1994・淡交社)』『E・ディ・アントニオ、ミッチ・タックマン著、林道郎訳『現代美術は語る――ニューヨーク・1940-1970』(1997・青土社)』


ステラ(Joseph Stella)
すてら
Joseph Stella
(1877―1946)

イタリア出身のアメリカの画家。ナポリ郊外のムロ・ルカノに生まれる。イタリアで教育を受けたが、1896年に渡米してアート・スチューデンツ・リーグで美術を学んだ。1909~10年に再度渡欧し、立体派、未来派の影響を受け、合衆国最初の未来派の理論的指導者となった。19年ころに始まる「ブルックリン橋」の連作で知られるように、アメリカ文明の特質である現代の都市環境や工業的な風景を、緊密な抽象的構成のなかに描き出す作風を発展させた。

[石崎浩一郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ステラ」の意味・わかりやすい解説

ステラ
Stella, Frank Philip

[生]1936.5.12. マサチューセッツ,モールデン
[没]2024.5.4. ニューヨーク,ニューヨーク
フランク・ステラ。アメリカ合衆国の画家。フルネーム Frank Philip Stella。ミニマル・アートの第一人者として活動を開始し,その後不規則な形状の作品や大規模なマルチメディア・レリーフを制作した。
プリンストン大学で美術を学ぶ。1958年ニューヨークに移住,1960年に最初の個展を開いた。一世代前の抽象表現主義に反抗し,平行な線のみで面を分割した単色の絵画から始めて,しだいに色の数を増やすとともに,変形したカンバスを用いた作品に移行した。抽象表現主義以降のアメリカの抽象絵画で最も注目される画家となる。1970年代後半には平面的な作品から脱して,多彩に塗られた金属板の組み合わせによるレリーフに移り,それまでのイメージを一変した。主要作品『タラデガ』(1981)など。

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