翻訳|canvas
英語のカンバスは、大麻(たいま)を意味する古典語に由来し、木綿や麻の繊維で織った厚地のじょうぶな粗布を、また具体的には帆布、テント、画布などをさす。もっとも一般的な用例は、絵画の基底材(支持体)である画布を意味するカンバスであり、この場合ほとんど油彩画そのものの同義語としても用いられる。
絵の具を塗布する基底材に布が用いられた歴史は、紀元前2000年ごろのエジプトにまでさかのぼることができる。しかし、今日のようなカンバスが板にかわる基底材として絵画に使用されるようになったのは、15世紀中ごろのベネチアをはじめとするイタリアである。文献としては、すでに12~13世紀ごろのエラククリスの書や、15世紀初めのチェンニーノ・チェンニーニの書に、亜麻(あま)布を画布として使用するための技法が記されている。カンバスが主流となるまでのヨーロッパの絵画は、壁画を別とすれば、その基底材はポプラやカシなどの板であったが、材料を吟味したうえで十分な下ごしらえをしなければならず、たいへん高価であった。また大画面のための板を得ることも容易ではなかった。これに比べると、カンバスは安価であるばかりではなく、はぎ合わせによって望みどおりの大きさのものをつくることもでき、また持ち運びにも便利であった。こうして16世紀から17世紀にかけて、油彩画技法の発展に伴ってカンバスが広く流布するようになった。
画布に使用される布地としては、各種の麻布や綿布があるが、とくに絵画用として織られた亜麻布が油彩画にもっとも適している。ベルギーあるいはアイルランド製の亜麻布は、品質が優れ世界各国に輸出されている。油彩画の制作にあたっては、この亜麻布を木枠に張り、膠(にかわ)などで目止めをし、白い地塗りを施さなければならない。しかし、現在ではこのような下ごしらえをしたカンバスが製品として販売されている。
[長谷川三郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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