カンバス(読み)かんばす(英語表記)canvas

翻訳|canvas

デジタル大辞泉 「カンバス」の意味・読み・例文・類語

カンバス(canvas)

麻などで目を粗く織った布。ズックキャンバス
油絵用の画布。麻などの布地に油その他を塗ったもの。キャンバス。

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精選版 日本国語大辞典 「カンバス」の意味・読み・例文・類語

カンバス

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] canvas ) もめん、麻などの太めの糸で織った、あらい布。キャンバス。
  2. (イ) 油絵をかくのに用いるもの。F(人物)型、P(風景)型、M(海景)型の三種がある。麻布。画布。
    1. [初出の実例]「油画を作ることを学ばんと欲して、カンバス(画に用ゆる布)を買ひ」(出典:西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉六)
  3. (ロ) 船の帆にしたり、重い物を入れる袋などに用いたりするもの。帆布
    1. [初出の実例]「マストのカンバス(帆布)は、ハッチの上部カバーであった」(出典:海に生くる人々(1926)〈葉山嘉樹〉四)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カンバス」の意味・わかりやすい解説

カンバス(画布)
かんばす
canvas

英語のカンバスは、大麻(たいま)を意味する古典語に由来し、木綿や麻の繊維で織った厚地のじょうぶな粗布を、また具体的には帆布、テント、画布などをさす。もっとも一般的な用例は、絵画の基底材(支持体)である画布を意味するカンバスであり、この場合ほとんど油彩画そのものの同義語としても用いられる。

 絵の具を塗布する基底材に布が用いられた歴史は、紀元前2000年ごろのエジプトにまでさかのぼることができる。しかし、今日のようなカンバスが板にかわる基底材として絵画に使用されるようになったのは、15世紀中ごろのベネチアをはじめとするイタリアである。文献としては、すでに12~13世紀ごろのエラククリスの書や、15世紀初めのチェンニーノ・チェンニーニの書に、亜麻(あま)布を画布として使用するための技法が記されている。カンバスが主流となるまでのヨーロッパの絵画は、壁画を別とすれば、その基底材はポプラやカシなどの板であったが、材料を吟味したうえで十分な下ごしらえをしなければならず、たいへん高価であった。また大画面のための板を得ることも容易ではなかった。これに比べると、カンバスは安価であるばかりではなく、はぎ合わせによって望みどおりの大きさのものをつくることもでき、また持ち運びにも便利であった。こうして16世紀から17世紀にかけて、油彩画技法の発展に伴ってカンバスが広く流布するようになった。

 画布に使用される布地としては、各種の麻布や綿布があるが、とくに絵画用として織られた亜麻布が油彩画にもっとも適している。ベルギーあるいはアイルランド製の亜麻布は、品質が優れ世界各国に輸出されている。油彩画の制作にあたっては、この亜麻布を木枠に張り、膠(にかわ)などで目止めをし、白い地塗りを施さなければならない。しかし、現在ではこのような下ごしらえをしたカンバスが製品として販売されている。

長谷川三郎


カンバス(織物)
かんばす
canvas

麻や綿糸を用いた強い緻密(ちみつ)な織物で、帆布、幕、画布、手芸用基布、芯地(しんじ)、テントなどに使用されるが、最近では化合繊のものも増加している。組織は太番手のものを用い、平織あるいは斜子(ななこ)組織に織り、漂白あるいは染色したのち、用途に応じて防水などの加工をする。種類や品質が多く、仕上げも柔らかいもの、堅いものなどがある。

[角山幸洋]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カンバス」の意味・わかりやすい解説

カンバス
canvas

画布。油彩画の支持材として用いられる。標準的なカンバスは,粗織 (あらおり) の麻布を用い,その上に膠水を引き,またはさらにその上に白亜をリンシード,ポピーで溶いたものを塗る。吸収のよい速乾性のものとしては白亜を塗ったアブソルバンがある。まれに木綿のカンバスも使用される。

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