アメリカのロサンゼルス市にある、1940年代以降の作品を対象とする美術館。略称MOCA(モカ)。1979年に設立された。1983年リトル・トーキョーに展示施設「テンポラリー・コンテンポラリー」(現、「ゲッフェン・コンテンポラリー・アットMOCA」)が、1986年本館である「カリフォルニア・プラザ本館」(現、「MOCAグランド・アベニュー」)が開館した。テンポラリー・コンテンポラリーは、1940年代に建てられたロサンゼルス市の所有する倉庫を、ロサンゼルス在住の建築家フランク・ゲーリーの設計により改装したものである。当初、本館が開館するまでの一時的な展示施設として開館したため、「テンポラリー」(一時的な)という名称がつけられたが、その空間の巨大さと歴史を重ねた建物の独特の魅力が現代美術の展示に好都合だったこともあって、本館開館後も展示施設として使われ続けることになった。1996年、美術館はデビッド・ゲッフェン財団から500万ドルの寄付を受け、同施設は「ゲッフェン・コンテンポラリー・アットMOCA」と改称された。
カリフォルニア・プラザ本館は、建築家磯崎新(あらた)の設計で、各展示室に自然光を採り入れているのが特徴である。
2001年、西ハリウッドにあるシーザー・ペリが設計したパシフィック・デザイン・センター内の屋外広場に、おもに建築やデザインの展示を目的とする分館「MOCAパシフィック・デザイン・センター」が開館した。この分館は独立した2階建てで、同じくペリの設計で1989年に建てられた建物を改修・転用したもの。2019年にこの分館は閉館した。
ロサンゼルス現代美術館は、1940年以降の作品約7000点(2021年現在)を収集している。そのなかにはイタリア、ミラノのコレクター、ジュゼッペ・パンザ・ディ・ビウーモGiuseppe Panza di Biumo(1923―2010)のコレクションから1984年に購入した抽象表現主義とポップ・アートの作品約80点、また1994年にディ・ビウーモから寄贈されたローレンス・キャロルLawrence Carroll(1954―2019)などロサンゼルスにゆかりのある10人のアーティストによる70点の作品が含まれる。また、ネバダ砂漠にあるマイケル・ハイザーMichael Heizer(1944― )のランド・アート《ダブル・ネガティブ》(1969)も1985年に購入され同館の所蔵となっている。
おもな展覧会には、ロサンゼルスの現代美術の存在を世界に印象づけた「ヘルター・スケルター:1990年代のロサンゼルス美術」展(1992)、ロバート・ラウシェンバーグの作品などポップ・アートを再考した「手書きのポップ:移行期のアメリカ美術 1955―62」展(1992~1993)、パフォーマンスを再解釈した「アクションから:パフォーマンスと物体の間 1949―1979」展(1998)などがある。また、ケース・スタディ・ハウス(1945年~1966年の間に、ロサンゼルスを中心に建てられた規格化をテーマとする実験的住宅建築プログラム)を包括的に紹介した「近代的な生活の青写真」展(1989~1990)などの建築展も積極的に行う。
[鷲田めるろ 2021年12月14日]
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