単数形はスパゲットspaghettoであるが、普通スパゲッティと複数形でよばれる。語源は、spagoスパーゴ(紐(ひも))にettoという縮小辞がついてできたことばである。形が細長い紐に似ていたからであろう。マカロニと並んで、乾燥パスタを代表するパスタの一種である。
スパゲッティの歴史は、ことばの成り立ちからみても、比較的新しいと考えられる。つまり、イタリアでパスタ産業が発展し、製麺(せいめん)機が製造された18世紀のころと考えられる。それまで、スパゲッティによく似たパスタが存在しなかったわけではない。たとえばベルミチェッリは13世紀の文献に出ている。ベルミチェッリは、ベルメ(毛虫などの長い虫)に、チェッリという縮小辞がついてできたことばであるから、おそらくスパゲッティによく似たパスタの一種であったと考えられる。
製法はマカロニと同じで、セモリーナ粉(グルテン含量の多いデューラム小麦)に水や卵を加えてよく練り、高圧のプレスで型金から押し出し、乾燥機で乾かす。形はすべて細長いが、太さは日本の場合JAS(ジャス)規格で1.2ミリメートル以上2.5ミリメートル未満のものとされている。
調理の仕方は、たっぷりと湯を沸かし、湯1リットルにつき軽く大さじ一杯の塩を入れてゆでる。ゆですぎないように注意し、「こし」のしっかりしているうちに湯切りをし(理想的なゆであがりの状態をアルデンテという)、すぐに温めておいたソースをあわせるのが、おいしく食べるこつである。
スパゲッティにあうソースは多いが、代表的なものはサルサ・ボロニェーゼ(ミートソース)と、サルサ・ナポレターナ(ナポリタンソース)であろう。ほかにアサリのソースのボンゴレ、ムールガイのソースのコッツェ、魚貝類のソースのペスカトーレ、トウガラシとニンニクのソースのアリオ・エ・ペペロンチーネ、ベーコンと卵のソースのカルボナーラ、バターとチーズだけのブッロ・エ・パルミジャーノなど数多くある。
[西村暢夫]
イタリア語のspago(紐)に由来。直径2mm,長さ25cm前後の細長い紐状の乾燥パスタで,イタリアの代表的パスタ食品の一つ。ゆでてバターでいため,各種のソースをかけたり,あえて食べる。18世紀ごろ,ナポリ地方を中心に開始されたといわれるスパゲッティ生産は,その当時,品種改良に成功したソース専用のサンマルツァーノ種のトマトの出現とあいまって,ナポリ市民の人気を博し,19世紀初頭にはナポリからローマへ急速に普及したと言われる。今日,スパゲッティがイタリアの代表的パスタ料理となったのは,各種ソースの応用範囲がきわめて広く,単にトマトソースばかりでなく,魚貝類を加えたペスカトーレ,肉を主材とするボロネーゼ,乳製品を主材とするカルボナーラなど,多くのイタリア各地のソースと調和するためである。ことに,第2次世界大戦後は,スパゲッティは調理の簡便性や食べやすさなどから日本,ヨーロッパ,アメリカなどでも親しまれている。
→パスタ
執筆者:木戸 星哲
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…米はポー川の中流域平原に位置するロンバルディア州とピエモンテ州で生産され,トウモロコシはイタリア北部の傾斜地で生産されるため,リゾット,ポレンタの料理はイタリア北部に起源を発している。それに対してスパゲッティやマカロニなどの乾燥パスタがイタリア南部で常食とされたのは,硬質小麦の耕作地が,かつてはイタリア南部に広がっていたことと,機械生産以前のパスタの自然乾燥条件がナポリ周辺のカンパニア地方に備わっていたことに由来している。乾燥パスタの発展はまた,ナポリで成功したソース用トマトの品種改良を抜きにしては考えられない。…
…広義には,小麦,豆,米など穀類の粉に,水,牛乳,卵などの液体とバター,油,塩,酵母,その他ピュレー状にしたホウレンソウなどの諸材料を,用途に応じて混入してこねあげた練り粉一般を指す。狭義には,パスタ食品のことで,スパゲッティ,マカロニ,ラザーニャ,フェットゥチーネなどを作るための,小麦粉と卵を基本材料とする練り粉とその製品の総称。パスタの起源については定かでないが,現在残る記録から13~14世紀にはすでにあったと推定されている。…
※「スパゲッティ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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