固定スリットと走行するフィルム,あるいは走査スリットと固定フィルムなどの組合せにより,スリットを通過した細長い画像の集合体として全体の映像を記録するカメラの総称。もっとも一般的なフォーカルプレンシャッターを備えた一眼レフカメラなども,この意味からいえばスリットカメラの一種といえるが,通常は除外される。スリットカメラの一つにパノラマカメラpanoramic cameraがある。これは後側主点を中心に回転する撮影レンズと,その焦点位置にあってレンズとともに回転するスリットからなり,この回転軸を中心として円形に配置されたフィルム上にきわめて大画角の映像をゆがみなく鮮鋭に撮影できる。場合によってこの画角は360度に達する。
また競馬,競輪などの着順判定カメラは,撮影レンズの焦点位置に固定されたスリットがあり,被写体像の走行にほぼ同期して同方向にフィルムを走らせるもので,走行する列車をその全長にわたり,等倍で鮮鋭な撮影をするためにもこのタイプのスリットカメラが用いられる。
執筆者:小倉 磐夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
通常のカメラにおけるシャッターのかわりに細いスリット(すきま)を設けたもので、フィルムを一定の速度で走行させ、移動する被写体を撮影し記録するカメラ。フォトチャート・カメラともいわれ、競馬をはじめ、競輪、オートレース、ドッグレース、陸上競技などのゴールの着順位を決定する写真判定用にシステムとして採用されている。移動被写体、たとえば競走馬の速さ15メートル毎秒に同調させ、ゴールライン延長線上で追い写しのようにフィルムを走行させれば、正確に着順位が写しとめられる。近年では、走行中の長い列車編成をそのまま長巻きのフィルムに写し込むような利用法も考えられている。
[小池恒裕]
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