スギ科(分子系統に基づく分類:ヒノキ科)の常緑大高木。センペル・セコイア、セコイアメスギ、イチイモドキともいう。世界でもっとも高い樹木で、最高のものは高さ120メートル、根元は径8.5メートルに達し、円錐(えんすい)形の樹形をつくる。樹皮は赤褐色、繊維質で厚く、細長く縦に裂ける。切り株や樹肌(きはだ)からよく萌芽(ほうが)する性質がある。枝はやや細く、輪生状に密生し、水平またはやや下垂し、光沢がある。葉は互生し、線状披針(ひしん)形で長さ約2センチメートル、表面は暗緑色、裏面の中央脈の左右に白色の気孔線が2本ある。雌雄同株。4~5月に開花する。雄花は小さく、小枝の先端につく。雌花は14~20個の鱗片(りんぺん)に覆われ、頂生する。球果は卵形で長さ1.5~2.5センチメートル、径1.2~1.8センチメートル、10~11月に黒褐色に熟す。果柄は鱗片葉からなる。果鱗は15~25片あり、圧扁(あつへん)四辺形をなす。種子は楕円(だえん)形で長さ5ミリメートル、幅4ミリメートル、両側に狭い翼がある。材は、辺材は淡橙(たんとう)色、心材は深褐赤色をなし、木目が美しい。また軽く、割裂性が高く、工作が容易で狂いも少ないため、建築、器具、土木用材などに利用する。木は公園や庭園に植えられる。
属名のセコイアは、北アメリカの先住民チェロキーの族長の名をとったものといわれる。中生代白亜紀から新生代中新世にかけて地球上に繁茂していたと考えられる植物で、現在アメリカ太平洋岸のオレゴン州南西部からカリフォルニア州モンテレー地方まで、長さ約800キロメートル、幅600キロメートルにわたって天然分布している。主として、海岸寄りの海抜700~1000メートルの山地に自生する。日本では至る所で本種の化石が出ている。また、関東地方以西の暖地に植栽したものはよく生育し、現在最大のものは高さ45メートル、径1.4メートルに達する。
セコイアによく似たセコイアオスギbig-tree, mammoth tree/Sequoiadendron giganteum (Lind.) Buchholzはかつてはセコイア属に含まれていたが、今日では別属として扱われ、ギガント・セコイアともいう。高さ100メートル、根元は径10メートル、世界最大の太さと最高樹齢の樹木とされている。葉は針形で枝に螺旋(らせん)状につき、一見スギの葉に似るが、成熟枝ではほとんど鱗片状となる。雌雄同株。1~3月に開花する。球果は1~数個つき、卵形で長さ5~8センチメートル、径4~5センチメートル。初めは直立するがのちに下垂し、翌年8~9月に赤褐色に成熟する。種子は長楕円形で薄く、狭い翼がある。新生代第三紀後半の地球上に繁茂していたと考えられるが、現在はカリフォルニア州のヨセミテ峡谷にのみ天然分布する。日本では赤枯病などにかかり、よく育たないが、欧米、オーストラリア、ニュージーランドなどではよく育つ。ほかにセコイアの名がつくものにメタセコイア(和名アケボノスギ)があるが、これもセコイアとは別属とされる。
[林 弥栄 2018年6月19日]
セコイアメスギ,イチイモドキともいい,北アメリカ西部コースト・レーンジズに産するスギ科の常緑大高木で,世界で最も丈の高い裸子植物である。まっすぐな樹幹で高さ120m,直径8mにも達する。樹皮は赤褐色海綿状で軟らかく厚さ30cmにもなって縦に深く裂ける。葉は細い枝に互生して2列に並び,線状披針形で平たく,長さ1.5~2.5cm。早春,枝端に目だたない花をつけ,雌球花は淡緑色長楕円形。10月ごろ長さ2~2.5cmの楕円状球形の球果を結び,らせん状に並ぶ果鱗の外面は菱形となる。北アメリカ,オレゴン州からカリフォルニア州の太平洋に面した標高700~1000mの山地に生育し,いわゆる巨木地帯の主要構成樹種の一つである。心材は鮮紅色か赤褐色で加工しやすく,建築・家具材として,また樹皮は絶縁材として用いられた。同じくシエラ・ネバダ山脈西側の標高1450~2000mの山地に分布するセコイアデンドロンSequoiadendron giganteum Buchh.(=Sequoia gigantea Decne.)(英名big-tree,mammoth tree)はセコイアオスギともいい,樹高110m,直径11mに達し,2000~4000年もいきて,世界で最も長寿で体積の大きい裸子植物といわれる。樹皮は灰褐色で厚さ60cmにもなる。スギに似た刺針形の針葉が螺生(らせい)する。球果は2年目に熟し,卵形で長さ5~8cm。材はもろく砕けやすい。現在,両種の生育地は国立公園などに包含され厳しく保護されている。両種とも地質時代には北半球に広く繁茂していた。日本の鮮新世ころの地層からもこれらと同じか近縁種の遺体が広く知られており,亜炭,褐炭そして仙台付近の埋木(うもれぎ)の大部分はセコイア属のものといわれる。
セコイアは生長が早く,萌芽性があって,日本でも関東以南の適潤の肥沃地なら高さ30m余に育つ。しかしセコイアデンドロンは赤枯病などのためほとんど生育できない。セコイアの名はアメリカ・インディアンのチェロキー族の言語学者Sequoyahを記念したものである。なお,生きている化石として有名なメタセコイアは植物分類上は別属になる。
執筆者:濱谷 稔夫
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…これは現生の属の中間的形質をもった種や属が絶滅したためと思われる。また分布も,タスマニアスギ属Athrotaxis(タスマニア),コウヨウザン属Cunninghamia(中国南部,台湾),スイショウ属Glyptostrobus(中国南東部),メタセコイア属Metasequoia(中国中部),セコイアSequoia(北アメリカ西部),セコイアオスギSequoiadendron(北アメリカ西部),タイワンスギ属Taiwania(中国南西部,台湾),スギ属Cryptomeria(日本と中国南東部),ヌマスギ属Taxodium(北アメリカ南東部,メキシコ)と,それぞれ隔離的に分布している(図)。タスマニアスギは包鱗上に多数の種鱗があり,タイワンスギでは種鱗が退化消失し,胚珠は包鱗上についている。…
…18世紀半ばにまずイギリス人植民者と戦闘状態にはいり,独立戦争当時にも植民者側と対立した。1820年代に独自の政府を樹立し,セコイアSequoyahによる〈チェロキー文字〉(アルファベットをモデルにした文字)の創出など,文化的にも栄えた。しかし,30年代に居住区域内で金鉱が発見され,土地を白人に売却せざるをえなくなった。…
※「セコイア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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