セラチア(その他表記)Serratia marcescens

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セラチア」の意味・わかりやすい解説

セラチア
Serratia marcescens

真正細菌類腸内細菌科。酸素の有無にかかわらず,水中土壌カイコをはじめとする種々の昆虫,ヒトの口や腸内などに広く分布する常在菌。牛乳やパンなどに増殖すると,色素プロジギオシン prodigiosinを生成して赤く染まるのをキリストの血のしたたりとみなし,古くから「レイキン (霊菌) 」と呼ばれた。ジャガイモに培養すると,まず白いコロニーをつくり,ほどなく赤色になる。肉汁では濁りを生じ,やがて表面が輪状に赤くなる。グラム陰性の桿菌で,ときとして径 0.5~1.0μmの球形に近くなる。周毛により運動し,しばしば5~6個の鎖状となる。手術後や末期癌などで免疫力の落ちている患者に感染した場合,日和見感染症として,菌血症,肺炎,尿路炎症,手術後の傷への感染症,腸炎などを引起す。ひどい場合には,菌の産生毒素によるショック状態,腎臓肝臓などに障害を起す多臓器不全となる。感染経路としては,チューブや人工呼吸器などの医療器具からの院内感染が指摘されることもある。治療にあたっては第三世代セフェム系抗生物質カルバペネム系抗生物質などの使用が有効であったが,それらを含む多く抗生物質に対する耐性を持った多剤耐性セラチアも登場し,治療が困難となる場合もある。なお,「セラチア」の名称は 18世紀のイタリアの科学者セラフィノ・セラッティ (Serafino Serrati) に由来する。

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