改訂新版 世界大百科事典 「センニュウ」の意味・わかりやすい解説
センニュウ (仙入)
grasshopper warbler
スズメ目ヒタキ科センニュウ属Locustellaの鳥の総称。世界で7種が知られる。全長12~18cm。どの種も全体に褐色のじみな羽色をしていて,外観はウグイスやヨシキリに似ている。この属はユーラシア大陸に広く分布し,日本ではエゾセンニュウL.fasciolata,シマセンニュウL.ochotensis,マキノセンニュウL.lanceolata,ウチヤマセンニュウL.pleskeiの4種が生息し,シベリアセンニュウL.certhiolaが迷鳥としての記録がある。このうちウチヤマセンニュウは北海道と伊豆諸島や九州の離島で,他の3種は北海道だけで繁殖する。草原から明るい林にかけてすみ,草むらややぶの中を動き回りながら昆虫をとって食べている。さえずっている雄を除いて姿を見かけることは少ない。雄のさえずりは種ごとにまったく異なっている。日本で繁殖する4種を例にすると,エゾセンニュウは,チョッピンカケタカという声でさえずる。この節回しはホトトギスのそれにやや似ている。シマセンニュウはチッチッチッチュカチュカチュカとせわしくさえずる。マキノセンニュウの声は,バッタかキリギリスを思わせるようなチキチキチキチキ……という連続音である。ウチヤマセンニュウは,チリリリリリチィチィチュイチュイチュイ。この類の鳥はなわばり性が強く,ある広さの土地を防衛して,その中で繁殖する。わん形の巣を低木の枝の間や草の中につくり,5~6月に1腹3~6個の卵を産む。抱卵は雌が行い,育雛(いくすう)は雌雄が交替であたる。どの種も繁殖地には夏鳥として5~6月に渡来し,秋・冬季には中国南部,東南アジア,インドなどに渡って越冬する。
執筆者:樋口 広芳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報