帝国(読み)テイコク

デジタル大辞泉 「帝国」の意味・読み・例文・類語

てい‐こく【帝国】

皇帝の統治する国家。「ローマ帝国
大日本だいにっぽん帝国」の略。
[補説]曲名別項。→帝国
[類語]連邦合衆国共和国君主国王国

ていこく【帝国】[曲名]

《原題、〈フランスL'impérialeハイドン交響曲第53番ニ長調の通称。1778年作曲。通称の由来は不明。

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精選版 日本国語大辞典 「帝国」の意味・読み・例文・類語

てい‐こく【帝国】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( [オランダ語] Keizerdom [英語] empire の訳語 ) 皇帝の統治する国家。〔訳鍵(1810)〕
  2. [ 2 ]だいにっぽんていこく(大日本帝国)」の略。
    1. [初出の実例]「我か帝国の光烈と、我か臣民の忠良にして、勇進なる気性とをして」(出典:開院式の勅語‐明治二三年(1890)一一月二九日)

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知恵蔵 「帝国」の解説

帝国

グローバリズムの進展に伴い国民国家を超えて出現した新しい主権の様相についての概念。イタリアの哲学者アントニオ・ネグリと米国の哲学者マイケル・ハートが共著『〈帝国〉』で提示した。世界大に拡大した資本主義体制を批判するために作り出された概念といえる。グローバリゼーションの状況を米国の一極集中による支配体制と見なすのではなく、その様相を国民国家や多国籍企業、国際的経済組織によって構成される、中心となる支配的権力を失った権力のネットワークと見なし、帝国と呼んでいる。米国の国際社会上の特別な地位と認めてはいるが、世界の政治経済上の中心的な支配権力とは見ておらず、いわゆる「アメリカ帝国主義」の主張とは峻別される。ネグリとハートによれば帝国の出現は、多様な人間の集合体を意味するマルチチュードの力の発現によって生じたという。マルチチュードは「国家」や「民族」と対立する、国籍を超えた人間存在を表す概念。資本主義社会の労働が非物質的労働の性格を強め、情報経済へと移行していくことで帝国の質を変化させるという。つまりマルチチュードが帝国を変える可能性があるとされるのである。

(野口勝三 京都精華大学助教授 / 2007年)


帝国

帝国は、古代より、皇帝の支配する統治体や、複数の政治単位を統治する広域的支配を指し、近代以降は、植民地を領有する国家を意味した。近年では、米国内外の論者が米国を「帝国」と表現する。その理由は、米ブッシュ政権が、公然と他国の主権を侵害し、かつての列強による帝国主義的侵略を連想させたため。その表現には、(1)唯一の軍事超大国として他と隔絶した軍事力を持ち、「悪」と名指しした政権を先制攻撃によって打倒する「世界の警察官」としての行動、(2)多国間の合意による拘束を嫌い、国連などでの反対を押し切り、米国を至上権威とみる「世界の裁判官」という意識、(3)軍事的優越性を「米国の正義の優位」と等置する政治家や知識人が世論を動員し力を得る米国の現状、などへの批判が込められている。この動向は、自由と民主主義の守護者という米国のイメージを損ない、世界秩序を不安定化させ、世界各地で反米主義を噴出させている。さらに戦争と軍拡により、財政貿易の双子の赤字が拡大するなど、「帝国」を支える経済能力を浸食している。それらの結果、米国内でも反省や批判が台頭している。

(坂本義和 東京大学名誉教授 / 中村研一 北海道大学教授 / 2007年)

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「帝国」の解説

帝国(ていこく)
Empire

元来は皇帝が支配する国家をさす言葉であり,その古典的な事例は古代のローマ帝国である。絶対的な権力と権威を持つ皇帝が,広大な領域,多民族を支配し,世界帝国をもって任じた。中国の秦,漢,唐の帝国も,モンゴル帝国も,その例である。近代においては,島国が広大な海外植民地を支配した大英帝国と大陸に拡大したロシア帝国ハプスブルク帝国の二つのタイプが出現した。しかし,これらの近代の帝国に共通するのは公用語による統治である。第一次世界大戦の終了は,多くの皇帝支配の帝国の崩壊をもたらし,第二次世界大戦は大英帝国の終焉と日本帝国の崩壊をもたらした。しかし,ソ連邦は革新されたロシア帝国であるという主張が現れ,今日強大な軍事力と経済力,さらに情報の一元的統制により世界を支配するアメリカを帝国ととらえる主張も生まれている。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「帝国」の意味・わかりやすい解説

帝国
ていこく
empire

通常は自国の国境を越えて多数・広大な領土や民族を強大な軍事力を背景に支配する国家をいう (大英帝国,大日本帝国など) 。その原型は古代ローマ帝国にあるが,近代においては海外に植民地をもったヨーロッパの列強をさすことが多い。さらに軍事力で広大な領域を支配している国や侵略主義的な大国も帝国と呼ばれる。 (→帝国主義 , 植民地主義 )

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普及版 字通 「帝国」の読み・字形・画数・意味

【帝国】ていこく

皇帝の国。

字通「帝」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の帝国の言及

【臣下】より

…ハインリヒ・マンの長編三部作《帝国》の第1部で,1911年から雑誌に逐次発表され,14年第1次世界大戦の勃発直前に完成した(これに《貧しき人びと》《頭》が続く)。この作品のドイツ帝国批判はきわめてきびしく,出版社は開戦当初の愛国的熱狂をおもんばかって,単行本の刊行を控えたほどだったが,18年刊行されるやたちまち10万部も売れた。…

※「帝国」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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