ソレノドン(その他表記)solenodon

改訂新版 世界大百科事典 「ソレノドン」の意味・わかりやすい解説

ソレノドン
solenodon

大型のジネズミに似た原始的な食虫類。キューバキューバソレノドンSolenodon cubanusとハイチのハイチソレノドンS.paradoxusの2種でソレノドン科Solenodontidaeを構成する。体長28~33cm,尾長17~26cm,体重約1kg。体はがんじょうで頭部が大きく,吻(ふん)が非常に長い。四肢には5指があり,つめが長い。指だけを地につけて歩く指行性で,ジグザグに進み,決してまっすぐには走らない。体色は黒褐色ないし赤褐色。森林低木茂みにすみ,夜行性で日中は地下の穴,樹洞,倒木の下などに潜むが,繁殖期以外は巣をつくらない。ふつう夕刻より行動し,昆虫,ミミズ,トカゲや木の根,葉,果実など手当りしだいに食べる。繁殖率は低く,雌は2年に1回,1腹1~3子を生むと考えられ,この低い繁殖率とイヌネコマングースなどの移入により,生息数が激減している。ソレノドンは太古からの生残りと考えられるが,北アメリカの漸新世から記録されていた化石は本科のものではないらしい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソレノドン」の意味・わかりやすい解説

ソレノドン
それのどん
solenodon

哺乳(ほにゅう)綱食虫目ソレノドン科に属する動物の総称。この科Solenodontidaeの仲間は1属2種だけが現存しており、西インド諸島に限産し、マダガスカル島のテンレク類やアフリカのポタモガーレ類とともに食虫類のなかでもとくに原始的な動物である。ジャコウネズミを大形にした外形をもち、頭胴長25~30センチメートル、尾長18~22センチメートル。吻(ふん)は長く、先端は裸出し、耳介は毛の外に突出している。尾は毛がまばらで、鱗(うろこ)状。手のつめはよく発達している。わきや鼠径(そけい)に臭腺(しゅうせん)をもつ。頭骨は長く、頭頂の矢状稜(りょう)や後頭稜がよく発達するが、頬骨(きょうこつ)弓は不完全である。歯式は

で合計40本。熱帯雨林にすみ、地上性で、日中は各種の穴や岩の割れ目に潜み、夜活動する。昆虫類のほか、各種の小動物を食べる。繁殖については不明の部分が多いが1産1~3子といわれる。ハイチ島の一部にいるハイチソレノドンSolenodon paradoxusは移入されたイヌ、ネコ、マングースなどのため絶滅に瀕(ひん)しており、キューバのキューバソレノドンS. cubanaも同様に減少している。

[阿部 永]

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世界大百科事典(旧版)内のソレノドンの言及

【食虫類】より

…昆虫,ミミズなどの無脊椎動物を主食とするが,ネズミなどを食べるものもある。おもに夜行性で単独生活をし,ソレノドン,ブラリナトガリネズミなどは,獲物にかみついて顎下腺(がつかせん)から分泌される毒液を注入し,弱らせてとらえる。またトガリネズミは超音波を発し進路を探る。…

【絶滅生物】より


[絶滅のおそれがある動物]
 自然破壊は熱帯地方で最も著しく,近年特にそれは急速に進みつつある。たとえばハイチでは1958年に島の80%をおおっていた森林が1978年にはわずか9%に激減し,野犬の増加もあってソレノドンは危機にしている。熱帯林には多くの種の動物がすみ個体数が少ないので,森林の破壊で絶滅する恐れが多い。…

※「ソレノドン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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