ソーマ(読み)そーま(英語表記)Soma

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ソーマ」の意味・わかりやすい解説

ソーマ
Soma

インド神話の神。もとは特殊な植物の名であったものが,さらにこの植物から造った神酒もソーマと呼ばれ,ベーダ祭祀の最も主要な供物であった。やがて,このソーマ酒を供える祭祀が盛んに行われるにつれて,ソーマは神格化されていき,ソーマ神に捧げる賛歌も多数作られた。特に『リグ・ベーダ』第9巻は,すべてソーマ神への賛歌で占められている。ソーマ酒の効果は誇張して賛美され,神,人,祖霊ともに愛飲し,霊力,不死力,勇気を得られるという。特にインドラ神に対しては,ソーマ酒を飲用してくれることを繰返し懇願している。ソーマの起源については,天界に秘蔵されていたソーマを神鷹がインドラ神のためにこの世にもたらしたものという。またソーマは,ブラーフマナおよびそれ以後の神話では月の神チャンドラと同一視されるようになった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソーマ」の意味・わかりやすい解説

ソーマ
そーま
Soma

古代インドの神酒。その原料となった植物および製法の過程はつまびらかにしえないが、起源は古くインド・イラン時代にさかのぼり(アベスタ語ハオマ)、インドにおいて早くから祭式に重要な供物とされた。一種の興奮飲料で、神々、とりわけインドラはこれを好み、ソーマを痛飲して悪魔を退治した。それは不死の妙薬甘露とされ、人間にも栄養、活力を与え、子孫増殖、治病延命の効あり、武人に勇気、詩人霊感を与えるといわれる。この神酒自体も早くから神格化され、多数の賛歌が『リグ・ベーダ』に伝えられている。ヒンドゥー教において、それは植物、とりわけ薬草の長とされ、月と同一視されて、数多くの多彩な神話を生んだ。またシバ神別名ともなる。

[原 實]

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