古代インド,ベーダ時代の宗教の中心をなす祭式において,祭火により諸神に捧げられ,残余を祭官その他の者たちにより飲まれた興奮性の飲料。祭式は飲料の名を冠してソーマ祭と呼ばれている。同名の植物を板上で両手に持った石器または臼で砕き,圧搾した液を羊毛の濾布でこし,木椀に入れ,水,牛乳等を混ぜて作られた。神々,特にインドラはこれを好み,これにより敵に打ち勝つ力を増大させ,また人間は詩的霊感を得たとされる。この祭式と特殊な供物の重要さは,《リグ・ベーダ》第9巻の全体が〈自身を浄化するソーマ〉の賛歌よりなっていることからもうかがわれる。ソーマは語形上アベスターのハオマと一致し,その起源はインド・イラン族の分離以前にさかのぼる。しかしインドでは実物の入手がむつかしく,早くからさまざまな代用物が用いられたため,植物学的同定は困難である。また神格としてのソーマは擬人法は発達しなかったが,《リグ・ベーダ》末期以後は月を神話上天に存するとされるソーマの容器と見たてる考えから月(神)とされるようになった。漢訳〈蘇摩〉はこの月(神)を意味する場合が多い。
執筆者:高橋 明
中国,元代のネストリウス派キリスト教徒の司祭。バール・ソーマ(サウマ)ともいう。大都(現,北京)に生まれた。オングート族出身の弟子マルコスMarcosとともに1275年エルサレム巡礼に出発し,オアシス路経由でマラガに至った。同地の巡礼は果たせなかったが,マルコスがネストリウス派法王マール・デンハの後任として法王となったのにともない,その師父となった。その後2人はイル・ハーン国王アルグンの使節としてローマとパリに行き,ローマ法王とイギリス,フランス両国王に会った。このときの法王との会見が法王によるモンテ・コルビノの東方派遣のきっかけとなった。これは彼の西方への大旅行とともに歴史的に大きな意味をもった。
執筆者:吉田 順一
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古代インドの神酒。その原料となった植物および製法の過程はつまびらかにしえないが、起源は古くインド・イラン時代にさかのぼり(アベスタ語ハオマ)、インドにおいて早くから祭式に重要な供物とされた。一種の興奮飲料で、神々、とりわけインドラはこれを好み、ソーマを痛飲して悪魔を退治した。それは不死の妙薬、甘露とされ、人間にも栄養、活力を与え、子孫増殖、治病延命の効あり、武人に勇気、詩人に霊感を与えるといわれる。この神酒自体も早くから神格化され、多数の賛歌が『リグ・ベーダ』に伝えられている。ヒンドゥー教において、それは植物、とりわけ薬草の長とされ、月と同一視されて、数多くの多彩な神話を生んだ。またシバ神の別名ともなる。
[原 實]
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…アメリカのモルガン商会の総裁であったワッソンR.G.Wassonは,趣味から取り組んだキノコにまつわる民俗学的研究を発展させて,キノコ民俗学ethnomycologyの分野を開拓した。ワッソンの研究はメキシコの山岳地帯に住む原住民に伝わる幻覚性キノコに伴う風習について,またインドのバラモン教の聖典《リグ・ベーダ》にある神にささげる聖なる供物ソーマについて考証をすすめ,これがベニテングタケであるという独創的な説を発表した。 ベニテングタケは毒キノコであるが,ヨーロッパではこれを幸福をもたらすキノコとして壁掛け,置物,服飾のアクセサリーなどの図案,題材に用いる。…
…その性状は明らかでないが,穀物を原料とするアルコール飲料と推定されている。インド・アーリヤ人の飲料としてはソーマとともに最も古いものの一つで,いずれも《リグ・ベーダ》にその名を記されている。ソーマが神聖な飲料として,濃厚な宗教的色彩を有していたのに対し,スラー酒はきわめて庶民的な飲料であったらしい。…
※「ソーマ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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