ゾーンメルティング(英語表記)zone melting

改訂新版 世界大百科事典 「ゾーンメルティング」の意味・わかりやすい解説

ゾーンメルティング
zone melting

帯域融解法,帯溶融法ともいう。棒状固体金属半導体セラミックスなど)に狭い幅の帯状加熱部分をつくり,環状ヒーターを用いて融解し,ヒーターの位置を棒の一端から他端へ移動させることにより融解帯の位置を順次移動させる融解法。1957年アメリカのファーンW.G.Pfannによって考案されたもので,固体の精製単結晶作製の一手段として用いられる。

 不純物(溶質)の固体中への平衡溶解度CSは,固体が融液となっている場合の不純物の平衡溶解度CLと一般に異なる。すなわち,凝固温度におけるCS/CLの値(平衡分配係数k0)は一般に1以下または1以上である。そこで,たとえばk0<1の場合,図1に示す融解帯を下から上へ移動させると,凝固部分の不純物濃度は,融解帯中の不純物濃度よりも小となり,したがってゾーンメルティングを行う前の不純物濃度C0よりも小さくなる。つまり固体は精製されることになる。ゾーンメルティングを同一方向に繰り返すと,図2に示すように,不純物(溶質)濃度は繰返し数nが増すほど減少していく。なお,融解帯中の不純物濃度は凝固部分よりも大となることから,最終凝固部となる棒の上端部では不純物濃度が著しく増加する。k0>1の場合は,k0<1の場合とは逆で,棒の上方部が精製される。この方法を用いて単結晶をつくるさいには,融解帯の移動速度をきわめて小とし融解帯の冷却速度を小とすることにより,過冷却をさけて新結晶粒生成をなくし,一つの結晶粒のみが成長するようにする。凝固時に体積が膨張する固体,たとえばGeやSiなどの単結晶をつくるのに用いられている。
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岩石学辞典 「ゾーンメルティング」の解説

ゾーンメルティング

ゾーンメルティング法(zone melting)はファンによって1952年にゲルマニウムの精製を目的として考案された方法で,帯熔融精製(zone refining)とも呼ばれる[Pfann : 1957, 1958].一般に熔融状態の物質が一端から凝固することを正常凝固という.この際に成分の分配係数が異なると,固体と液体の間の成分濃度は次第に変化し,対象物の一部分を熔融させてその部分を一方向に移動させると成分の偏析が起こる.熔融帯が一回通過しただけでは成分の偏析は少なく正常凝固とほとんど変わらないが,繰り返し熔融帯を通過させると極めて高純度のものが得られる.これがゾーンメルティング法で,この方法には安定な熔融部分を作る加熱熱源と,反対側を冷却して熔融体が固化させることが必要である.ハリスはこの考えを地球に応用し,熔融したマグマの上昇の過程でゾーンメルティングが起こると考え,その後,久城もこの過程をマグマの上昇中の分化作用として取り上げた[Harris : 1957, Kushiro : 1968].地球には深部から地表にかけて温度勾配があり,適当な深さで岩石が熔融することは可能である.その熔融物質が上昇する場合にマグマの温度が周囲よりも高ければ,冷却によるマグマの温度低下と固化の際の潜熱を含めた熱量は流出して,周囲の温度が上昇し同じ温度になるまで熱の流出は継続する.流出した熱量は反応などによる発熱がないかぎり再び元のマグマに戻ることはない.この凝固過程が地球内部で上方向に進行するためには,マグマは直上部分を熔融温度まで加熱して,さらに潜熱を供給して元のマグマと同じ量の岩石を熔融する必要がある.また圧力の高い深度からマグマが断熱的に上昇したとしても,マグマにはそのような十分な熱量はない.偏析の効果が現れるためには数多くのゾーンメルティング作用が必要であるが,このようなことが天然で繰り返し起こることは期待できない.このようにマグマが固結する際の熱量や温度を考慮すれば,ゾーンメルティング法と同様の機構でマグマの分化作用が起こることは不可能である[鈴木 : 1994].

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゾーンメルティング」の意味・わかりやすい解説

ゾーンメルティング
zone melting

金属や半導体の精製法の一つで,金属などが融解している状態から固化する際,固相中に取込まれる不純物の量が液相中のそれと異なる現象 (偏析現象) を利用している。帯域溶融法または帯域精製法ともいう。金属棒をボート皿に載せ,あるいは垂直に懸垂し,これに沿って短寸の電気抵抗炉または高周波炉を摺動するかまたは試料を移動して,局部的溶融部分を移動してゆく。ほとんどの不純物は偏析係数が1より小さいので,通過後の凝固部分の純度が上がり不純物は次第に棒の末端のほうへ濃縮される。ただし,不純物によっては,偏析係数が1より大きく,棒の他端に濃縮されるものもある。この操作を繰返すと最終的に高純度の金属が得られる。半導体原料のシリコン,ゲルマニウムの精製に実用され,99.999999999% (イレブンナイン) の高純度が得られている。実験室的にはほとんどあらゆる種類の金属に応用でき,基礎実験技術としても重要である。実用上では,最近特に発達の著しい集積回路,LSIはすべて高純度のシリコン,ゲルマニウムのトランジスタを使用したもので,基礎的にゾーンメルティングの技術に負うところが大きい。

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百科事典マイペディア 「ゾーンメルティング」の意味・わかりやすい解説

ゾーンメルティング

固体を精製したり単結晶を作製するのに利用される方法。帯域溶融法とも。棒状の金属の一端を加熱溶融し,加熱部位を徐々に移行させると,冷却部分から順次凝固(結晶化)し,その際不純物は溶融部分とともに移動し他端に集められる。ゲルマニウム,シリコン(ケイ素)などの超高純度精製,微量不純物の濃度均一化などに利用。半導体工業の重要な技術となっている。
→関連項目ケイ(珪)素ゲルマニウム真空冶金単結晶

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