岩石学辞典 「分化作用」の解説
分化作用
マグマ組成の多様化は,マグマが発生した領域から上昇し固結して消滅するまでの時間的および空間的に広い範囲で起こる.分化作用にはマグマ自体が内部で組成が変化する過程のみならず,周囲の岩石との同化作用や複数のマグマの混合など他の物質との相互作用が考えられている.マグマの分化作用の過程における成分物質の移動能力は,温度圧力などの環境条件によって異なり,分化作用の機構に差ができる.温度低下による結晶作用が原因で分化作用が起こる場合には,晶出した結晶の量が増加するに従い急速に物質の移動範囲は小さくなる.マグマは移動している場合でも,結晶作用と早期に晶出した結晶の沈下,火道の壁の上で結晶の核形成,壁と岩石との反応,揮発性成分の逸散など様々な作用が起こり,部分的にマグマの組成が変化する原因となる.これらはすべて組み合わさって複合的に起こる機構であり単純な分類は不可能であるが,分化作用の機構を大別すると,マグマが全体としては動かずにマグマ溜まり内部で分化作用が起きる場合と,マグマが移動している過程で分化作用が起きる場合があり,それぞれ分化作用の機構が異なる.現実の岩石の多様性の解釈にはいろいろな分化作用の組み合わせが予想されるが,今までの解釈の中には分化作用の規模や,冷却などの分化機構で疑わしいものがかなり見受けられる[鈴木 : 1994].