分化作用(読み)ぶんかさよう(その他表記)differentiation

翻訳|differentiation

岩石学辞典 「分化作用」の解説

分化作用

一般に共通の本源マグマから多様な岩石を作り出す進化過程のこと.共通的な母マグマから,その場所で複数個の岩石型ができる成因を述べる語である[Broegger : 1895, Harker : 1909].イディングスとデイリイはこの語をマグマの分別した量が分離または濃集することの記述に用いた[Iddings : 1909, Daly : 1933].この分別したマグマは均質でも不均質でもよく,化学組成は母マグマとは対称的なものとなる.分別したマグマは明瞭な貫入体となるか,母マグマ岩体の中に残る.この過程のために,マグマの分化作用は結晶分別作用(crystal fractionation),熱対流(thermal convection),水簸(すいひ)作用(elutriation),分子拡散(molecular diffusion),液体不混和(liquid immischibility)など無数の作用を形成する.分別作用という語はマグマが冷却して結晶作用が行なわれることまで拡大された[Bowen : 1915, 1919, 1928, Tyrrell : 1926].マグマは基本的に均質であるとして,均質な物質が化学組成の異なった複数の物質あるいは不均質な物質に変化する過程が分化作用であるが,実際には分化作用の結果形成された物質が均質であるか不均質であるかはあまり検討されていない.マグマの分化作用は大規模な層状貫入岩体で知られているがその例は限られている.どこにでも普通に存在する平凡な岩体の例は少なく,大規模な岩体の例を一般化して小規模な岩体に応用して一般化することは無理がある[鈴木 : 1994].
マグマ組成の多様化は,マグマが発生した領域から上昇し固結して消滅するまでの時間的および空間的に広い範囲で起こる.分化作用にはマグマ自体が内部で組成が変化する過程のみならず,周囲の岩石との同化作用や複数のマグマの混合など他の物質との相互作用が考えられている.マグマの分化作用の過程における成分物質の移動能力は,温度圧力などの環境条件によって異なり,分化作用の機構に差ができる.温度低下による結晶作用が原因で分化作用が起こる場合には,晶出した結晶の量が増加するに従い急速に物質の移動範囲は小さくなる.マグマは移動している場合でも,結晶作用と早期に晶出した結晶の沈下,火道の壁の上で結晶の核形成,壁と岩石との反応,揮発性成分の逸散など様々な作用が起こり,部分的にマグマの組成が変化する原因となる.これらはすべて組み合わさって複合的に起こる機構であり単純な分類は不可能であるが,分化作用の機構を大別すると,マグマが全体としては動かずにマグマ溜まり内部で分化作用が起きる場合と,マグマが移動している過程で分化作用が起きる場合があり,それぞれ分化作用の機構が異なる.現実の岩石の多様性の解釈にはいろいろな分化作用の組み合わせが予想されるが,今までの解釈の中には分化作用の規模や,冷却などの分化機構で疑わしいものがかなり見受けられる[鈴木 : 1994].

出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報

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