タイ式ボクシング(読み)たいしきぼくしんぐ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タイ式ボクシング」の意味・わかりやすい解説

タイ式ボクシング
たいしきぼくしんぐ

ボクシングに似た格闘競技ムエタイとよばれ、その起源はかなり古い。かつては手に包帯を巻いただけであったが、試合が残酷すぎるということで、現在はボクシングと同じように、グラブ(4オンス=約113グラム)を使っている。主武器は足技(あしわざ)で、そのキックは空手の回し蹴(げ)りに似ている。足を振り回すようにしての、左右連続蹴りの大技が特徴である。ボクシングと違う点は、蹴り、肘(ひじ)打ちが許されていることで、反則サミング(目を突くこと)、急所(股間(こかん))攻撃、かみつき、首を絞めることなどである。

 ビルマミャンマー)、インドなど東南アジア地域にこれと似た足技競技があることから考えて、仏教伝来によってインドの闘技が伝わり、それが各国のもつ闘争術と合体して進化したものと思われる。一説には、いまから500年ほど前に中国拳法(けんぽう)がタイに伝わり、武器を好まぬタイ国人の護身術として発達したともいわれている。

 競技方法は、アマチュアが2分3ラウンド制でインターバルが1分、プロが3分5ラウンド制でインターバルは2分となっている。ジャッジ5名のうち3名が有効とすれば1ポイントが加算される。勝敗判定には、ポイント数の判定、KOTKOレフェリーストップギブアップ失格がある。アマチュアは20ポイントの差が生じるとTKOが成立する。階級はボクシングに準ずる。

 タイでは、まずムエタイを習ってから国際ボクシングに転向する傾向があり、世界ランキングにも名を連ねる名選手が多い。なお、キックボクシングは、ムエタイに空手を加えたもので、日本独特の競技である。

[石井恒男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タイ式ボクシング」の意味・わかりやすい解説

タイ式ボクシング
タイしきボクシング

タイで行なわれる蹴り技を主体とした格闘技。ムエタイと呼ばれ,タイの国技となっている。試合開始前にはワイクルーと呼ばれる,神に勝利を願う踊りの儀式がとり行なわれる。競技者は両手にグラブをはめ,蹴り以外に,ボクシングのパンチ,両肘,両膝を使った攻撃を仕掛けるが,投げ技と関節技は禁止されている。中世における,素手素足を使った接近戦の戦闘技法が起源ともいわれ,1955年に競技ルールが整備された。ラウンド制,体重別階級制などが導入され,競技時間はアマチュアの場合1ラウンド2分の3ラウンド制,プロの場合1ラウンド3分の5ラウンド制。日本のキックボクシングは,タイ式ボクシングのルールを日本式に改めたものである。

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