「包帯」は「繃帯」の書き換え。
創傷や骨折、病気の治療・処置のため、比較的長時間にわたって包帯材料を身体に装着する器械的操作をいう。包帯材料とは包帯に使用される物品のすべてをいい、その手技を包帯法とよぶ。したがって、その目的も、次に述べるように多岐にわたっている。すなわち、(1)創傷や表在性疾患の被覆保護、(2)局所に貼布(ちょうふ)する薬剤・器材の滑脱防止、(3)安静保護、(4)骨折・脱臼(だっきゅう)の整復維持、(5)手術創の離開防止、(6)病変部の正常位整復保持、(7)病的突出部の防圧、(8)止血、(9)形態異常の治療、(10)身体一部の欠損補填(ほてん)、(11)損傷・疾病の救急処置、(12)温熱・寒冷・湿気を身体に適用する場合などである。また、これらの目的に応じて、包帯を被覆包帯、支持包帯、固定包帯、圧迫包帯、牽引(けんいん)包帯、矯正(きょうせい)包帯、代償包帯、救急包帯の呼称で区別することもある。さらに包帯材料によって、包帯は巻軸(けんじく)包帯、布帕(ふばつ)包帯(三角布(巾(きん))、四角布、丁字帯など)、複製包帯、絆創膏(ばんそうこう)包帯、副子(ふくし)包帯、ギプス包帯に分類される。なお、医療のうえで、狭義に包帯という場合は被覆包帯をさし、一般に包帯という場合は巻軸包帯をさす場合が多い。
包帯の生地は、ガーゼのみが日本薬局方で規定されているが、ほかは規定外となっている。一般的には、ガーゼと晒(さらし)木綿が多く使用されている。幅30センチメートル、長さ10メートルのものを一反といい、半反のものを等間隔に1~8つに裂いて包帯とする。二つに裂いたものを二裂包帯、三つに裂いたものを三裂包帯とよんでいる。普通には四、五、六裂包帯がよく使用されており、これらの生地を一方の端から巻いて円柱状にしたものが巻軸包帯である。
[山根信子]
巻軸包帯を例に、包帯法の基本について触れる。巻軸包帯の基本手技には、環行帯、螺旋(らせん)帯、蛇行帯、折転帯、亀甲(きっこう)(集合・離開)帯、麦穂(ばくすい)(上行・下行)帯、三節帯、反復(帽状)帯があり、これらを適当に組み合わせることによって身体各部の包帯が可能となる。巻き方の原則と注意については次に述べるとおりである。
(1)患者の前に立ち、包帯を左から右へ向けて、皮膚から離さないように、転がすようにして平均した圧迫で巻いていく。
(2)末梢(まっしょう)から中枢に向けて巻くのを原則とする。
(3)緩ければ目的を果たさないし、きつすぎれば血液の循環障害をおこす。
(4)血行障害を早く発見して、うっ血を予防するためには、末梢部の皮膚の変化を観察しなければならない。このため指先などは出して巻く。
(5)包帯による苦痛を与えないために、巻く部位は必要最低限の範囲とし、必要な箇所を支えて迅速に巻く。
(6)人体の自然の解剖的位置を維持して巻き、皮膚の2面は、けっしてつけて巻かない。
(7)包帯を止める位置は、創傷の部位や圧迫部位を避ける。
(8)包帯を解くときは、苦痛を与えないように創傷面を保護して解く。
また、伸縮性のある合成繊維を生地に織り込んだ伸縮(弾性)包帯もあり、これには、帯状と袋状(ネット状)があり、袋状のものは大きさが何種類かに分かれ、用途に応じた長さに切ってかぶせて使うようになっている。このほか、プラスチック包帯といって、創面に直接スプレーをし、殺菌性の透明なプラスチック膜で覆うようなものもある。
[山根信子]
『藤原文夫著『包帯の巻き方』(1980・南江堂)』
体の一部をおおったり,牽引したり,固定したりして,創面を保護し,治癒を促進させるのに用いる医療材料の一つ。通常は,さらし木綿を種々の幅に裂いて巻いた巻軸帯を指すが,布片を四角いまま使用する四角巾や対角線で切った三角巾も包帯の一種である。また,接着剤のついた絆創膏包帯やギプス粉のついたギプス包帯は,固定に用いられる。関節や頭部などの被覆固定しにくい部分では,伸縮性のない巻軸帯を用いるに当たって,種々の巻き方が考案されている。これを包帯法という。しかし現在では,織り方や糸の材質で伸縮自在な伸縮包帯,ネット状であらゆる形状に適合するスピード包帯などが考案され,包帯法もすたれつつある。
執筆者:小野 美貴子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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