改訂新版 世界大百科事典 「タウナギ」の意味・わかりやすい解説
タウナギ (田鰻)
rice eel
Monopterus albus
タウナギ目タウナギ科の淡水魚で1属1種。一見ウナギに似るが,頭が大きくて体の後部はしだいに細くなり尾端がとがる。体色は赤褐色で,黒い小斑点が散在する。全長70~80cmに達する。胸びれと腹びれがなく,背びれとしりびれが皮褶(ひしゆう)だけでできている点や,鰓孔(えらあな)が下面に開き,左右のものが接続する点も目だった特徴で,この仲間は系統上特異な群とされる。タウナギは東南アジアから中国,台湾,朝鮮半島にかけて分布し,おもに水田や浅い池沼に生息する。日本では沖縄を除けば,東京の上野の不忍池,京都の二条城の堀,その他の限られた場所でしか知られていない。しかも,もとからそこにいたものかどうかもわからない。
昼間は泥底や物陰に潜み,夜間に出てきて小動物や小魚をあさる。えらは著しく退化して役に立たない。その代わりに空気を吸い,口腔やのどの内壁を通じてガス交換を行う。水槽の中ではときどき水面上に頭を出して呼吸するのが見られる。冬に池沼の水がかれても,干上がった泥の中で生きのびることができる。雌から雄に性転換することも有名で,全長30cm前後まではすべて雌であるが,50cm前後になると雄に変わり,中間の大きさのものは雌雄同体で卵精巣をもつ。産卵期に雄は粘液に包まれた泡を吐き出して巣をつくり,雌の産んだ卵をここに集めて保護する。本場の中国では黄鱔(ホワンシヤン),または鱔(シヤン)と呼ばれ,油でいためるなどして賞味される。
執筆者:羽生 功
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報